第45回 全体市場価値

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今回の米国特許法改正では、損害賠償の算定方法については規定されませんでした。
これまでも損害賠償については改正案には導入される議論がありましたが、2009年の改正案(第111議会)からこの議論は下火となっていました。
損害賠償については、全体市場価値で判断するという論点があります。

全体市場価値(entire market value)

特許侵害の損害賠償の算定方法として、市場全体価値で判断するという手法があります。
たとえば自動車の部品の一部が特許されており、この部品の特許権が侵害され、損害賠償請求する場合に、製品全体、つまり自動車の市場価値をもとに損害額を算定するという手法です。
Lucent Technology, Inc. v. Gateway Inc.の訴訟において、全体市場価値により損害額を算定すると陪審が判断しましたが、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)はこれを差し戻しました。
対象となる特許は、Day特許といわれるAT&T社の”touch screen form entry system”です。
陪審は損害額をUS$357,693,056.18と認定し、CAFCはこれを証拠不十分として地裁に差し戻しました。
この特許は、キーボードを使用せずに、コンピュータスクリーンに情報を入力する方法に関するものです。

ベストモード要件についての改正

今回の改正でベストモードの要件を充たしていないことを理由として、無効を主張できないこととなりました。
ベストモードの要件削除
明細書には、ベストモードを記載する必要があります。ベストモードとは、出願人が考える発明の最良実施形態です。
この要件は削除されていませんが、ベストモードが記載されていないことを理由として、特許が無効であるとはいえないこととなりました。
特に侵害といわれた者が特許が無効であると主張するためには、ベストモードが記載されていないことを理由とはできない旨が規定されました。
まず米国特許法282条が改正されました。

Sec. 15

35USC 282

(a)IN GENERAL.–Section 282 of title 35, United States Code, is amended in the second undesignated paragraph by striking paragraph(3)and inserting the following:
“(3)Invalidity of the patent or any claim in suit for failure to comply with–
“(A)any requirement of section 112, except that the failure to disclose the best mode shall not be a basis on which any claim of a patent may be canceled or held invalid or otherwise unenforceable; or
“(B)any requirement of section 251.”.

(a)原則
米国特許法282条は、改正される。
(3)係争中の特許またはいずれかのクレームの無効
(A)112条の要件に従っていないことを理由として、無効と主張できる。ただし、特許のクレームがベストモードを開示していないことを除いて、112条の要件を充たしてないことは、特許が取り消され、あるいは無効と認定されること、あるいは執行不能であることの根拠とはならない。

つまり、侵害といわれた者は、明細書の記載要件を充たしていないことを理由として、特許を無効と主張できますが、ベストモードの要件を充たしていないことを理由としては、無効とは主張できません。

今週のポイント

  • 今回の米国特許法改正では、損害賠償の算定方法については規定されなかった。
  • 特許侵害の損害賠償の算定方法として、市場全体価値で判断するという手法がある。Lucent Technology, Inc. v. Gateway Inc.の訴訟において、全体市場価値により損害額を算定すると陪審が判断したが、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)はこれを差し戻した。
  • 今回の改正でベストモードの要件を充たしていないことを理由として、無効を主張できないこととなった。

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