第42回 ヒルマードクトリン

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改正後の米国特許法102条の規定は以下の通りです。
「有効出願日前に特許され、刊行物に記載され、公に使用され、販売され、公衆が利用可能であった発明は特許されない(102 条(a)(1))。」
「特許請求された発明が特許査定され、特許公報に掲載され、あるいは。出願公開された場合は特許されない(同条(a)(2))。」
この例外があります。

102条の例外規定

  • 有効出願日前1以内に、発明者又は共同発明者、あるいは発明者または共同発明者から直接的または間接的に開示された主題を得た他人によりなされた開示、
  • 開示前に、発明者又は共同発明者、あるいは発明者または共同発明者から直接的または間接的に開示された主題を得た他人により、当該主題が開示された場合は、先行技術となりません(102条(b))。
    まず、出願以前の1年以内に発明者が発明を開示した場合は先行技術とならず、また他人が開示しても、それより以前に発明者、あるいは共同発明者、あるいは発明者や共同発明者の開示から得た他人が開示すれば、他人の開示は先行技術とはなりません。

改正前のワンイヤールール(one year rule)

上記のように改正により1年のグレースピリオド(grace period)が導入されましたが、改正前はワンイヤールールというものが定められていました。
旧102条(b)に規定されていました。

(b)the invention was patented or described in a printed publication in this or a foreign country or in public use or on sale in this country, more than one year prior to the date of the application for patent in the United States,

米国における特許出願日より以前の1年以上前に、発明が特許され、あるいは米国または外国の刊行物に記載されていた場合、あるいは米国で公に使用され、あるいは販売された場合は特許を受けることができない。

これは逆に言うと、米国出願日前1年以内であれば、特許公報に掲載されたり、刊行物に記載されたり、使用、販売しても新規性を失わないということです。
今回改正で導入された1年の猶予期間は先公表主義であり、他人の公開より発明者が先に公表してしまえば、他人の公開は先行技術にはならない、といういわゆる公表の早い者勝ちです。米国の導入した先願主義はこのようなものです。
従来のワンイヤールールは、出願前1年以内であれば、あらゆる公開が新規性喪失の原因とはならなかったのですが、今回導入された1年の猶予期間は、出願前1年以内の発明者による公開、そして他人が公開した場合には、それより前に発明者が公開していればよい、という制度です。
したがって、発明者としてはとにかく公知にして、それより1年以内に出願すればよい、という制度で結局は従来のワンイヤールールとあまり変わっていないものと考えられます。
しかし、発明者が公開しないでいるうちに他人が公知にしてしまった場合には、もはや新規性がありません。
これが従来のワンイヤールールより厳しい点です。
つまり他人と公表について先を争う、という要素が入ってきた点で、先公表主義となりました。
ご存知のように、従来はどちらが先に発明したかを争う先発明主義でした。

ヒルマードクトリンの廃止

他国に出願してそれを基礎として優先権主張して米国出願する場合に、米国出願日から後願排除できる、という判例で確立されたヒルマードクトリンに対しては批判が強く、今回の改正で廃止されました。
有効出願日が優先権主張の先の出願日であると規定されていることによる。このとき先の出願の言語にかかわらず、先の出願日に後願を排除できます。

§102

(b)EXCEPTIONS.–
“(1)DISCLOSURES MADE 1 YEAR OR LESS BEFORE THE EFFECTIVE FILING DATE OF THE CLAIMED INVENTION.–A disclosure made 1 year or less before the effective filing date of a claimed invention shall not be prior art to the claimed invention under subsection(a)(1)if–
“(A)the disclosure was made by the inventor or joint inventor or by another who obtained the subject matter disclosed directly or indirectly from the inventor or a joint inventor; or
“(B)the subject matter disclosed had, before such disclosure, been publicly disclosed by the inventor or a joint inventor or another who obtained the subject matter disclosed directly or indirectly from the inventor or a joint inventor.

改正前の102条(e)

(e)the invention was described in
(1)an application for patent, published under section 122(b), by another filed in the United States before the invention by the applicant for patent or
(2)a patent granted on an application for patent by another filed in the United States before the invention by the applicant for patent, except that an international application filed under the treaty defined in section 351(a)shall have the effects for the purposes of this subsection of an application filed in the United States only if the international application designated the United States and was published under Article 21(2)of such treaty in the English language;

(1)特許出願人による発明以前に、米国で出願された他人による122条(b)において出願公開された特許出願
(2)特許出願人による発明以前に、米国で出願された他人による特許出願に認められた特許
(但し、351条(a)により規定された条約により出願された国際出願が、米国でされた出願の本条による目的のための効果を有する場合を除く(米国を指定した国際出願が、PCT21条により英語で国際公開された場合に限る))。
に記載された発明は特許されない。

まず改正前の102条(e)です。
先発明主義であったため、新規性の基準は発明時でした。
発明前に他人の同じ発明が①出願公開された場合、②PCTにより国際公開された場合は新規性がありません。

今週のポイント

  • 改正後の102条は、
    1. 出願以前の1年以内に発明者が発明を開示した場合は先行技術とならない、
    2. 他人が開示しても、それより以前に発明者、あるいは共同発明者、あるいは発明者や共同発明者の開示から得た他人が開示すれば、他人の開示は先行技術とはならない、

    という例外がある。

  • 改正前はワンイヤールールが定められており、米国出願日前1年以内であれば、特許公報に掲載されたり、刊行物に記載されたり、使用、販売しても新規性を失わないことが規定されていた。
  • 他国に出願してそれを基礎として優先権主張して米国出願する場合に、米国出願日から後願排除できる、という判例で確立されたヒルマードクトリンに対しては批判が強く、今回の改正で廃止された。具体的には、有効出願日が優先権主張の先の出願日であると規定されていることによる。このとき先の出願の言語にかかわらず、先の出願日に後願を排除できる。

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