第41回 改正後の新規性の規定 新102条

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今回の米国特許法改正により新規性の規定が大きく変わりました。
102条が大改正され、先願主義となっていますが、これは先公表主義との抱き合わせによる先願主義です。
つまり、日本の先願主義のように、先に出願した者が勝つ、という単に出願の早い者勝ちの先願主義ではなく、発明者が先に公表してしまえば、後に第三者が同じ発明を公知にしても、この第三者の公知にした発明は先行技術にならない、というものです。

先公表主義と組み合わせた先願主義とは

簡単な例で説明します。

  • A氏が3/31に公表、4/5出願
  • B氏が4/1に公表、4/2に出願

というときは、A氏が先に公表しているので、たとえB氏がA氏より先に出願していても、A氏は新規性を失いません。
したがってA氏は他に拒絶理由がなければ特許を受けられます。
B氏はA氏より先願ですが、A氏の公表が先行技術となって特許を受けられません。
日本の先願主義でいうと、B氏が先願となりますが、日本の新規性の規定は、出願前に知られていてはダメなので、この場合A、B氏ともに特許を受けられません。

グレースピリオドとは

しかも上述の例は、すべてA氏の有効出願日前から1年以内に公表した場合に適用されます。
これが今回導入された「1年のグレースピリオド(grace period)」です。猶予期間と訳すことができます。
有効出願日以前の1年以内に発明者が他人より先に公表すれば、他人の公表は先行技術とみなされません。
この点で「1年の猶予期間」ということができます。

有効出願日とは

ここで「有効出願日(effective date)」という概念が出てきました。
これは何でしょうか。
通常の米国出願日と考えれば良いのですが、有効出願日は他にも意味があり、パリ条約の優先権主張がされている場合は、優先日つまり第一国出願日を指します。
つまり、A氏が日本に出願してから優先権主張をして米国出願した場合は、日本の出願日が有効出願日となります。

グレースピリオド+優先権期間で合計2年

たとえば日本出願をして、これをもとに優先権主張して米国に出願した場合は、出願人からみると、グレースピリオド(1年)+優先期間(1年)の合計2年の猶予があることになります。つまり以下のような関係です。

グレースピリオドの1年→日本出願(有効出願日)→優先期間の1年→米国出願日

グレースピリオドの1年以内には発明者が先に公表してしまえばよいし、優先期間の1年以内は、そもそも他人の公表は先行技術となりません。

新規性の規定の発効日

改正後の新規性の規定の発効日は、制定日(2011年9月16日)から起算して1年6月後の2013年3月16日です。
ただし、この日以前の開示行為にすでに改正法は適用されています。
米国に優先権主張をして出願した日が2013年3.16以降でも、第一国出願がこの日以前であるので、旧法が適用されます。
しかし、米国出願の際に新たなクレームを加えた場合は、このクレームは改正法の適用を受けるので、このようなクレームを少なくとも一つ含む米国出願には改正法が適用されます。

新102条(a)の内容

(1)世界公知の採用

新102条(a)(1)

“the claimed invention was patented, described in a printed publication, or in public use, on sale, or otherwise available to the public before the effective filing date of the claimed invention”

「特許請求された発明が、その有効出願日以前に、特許され、印刷刊行物に記載され、公に使用され、販売され、あるいは公衆が利用可能であった場合は特許を受けることができない」

これは通常の新規性の規定であり、有効出願日前に特許公報に掲載されたり、刊行物に記載された場合等は新規性がないというもので、米国かそれ以外の国かを問わず、公知になった場合は特許されません。
つまり世界公知の採用です。
改正以前は、米国内で既に知られ、特許されていた場合は特許を受けることができない、と規定されていました。

(2)日本特許法29条2に類似の規定

新102条(a)(2)

“the claimed invention was described in a patent issued under section 151, or in an application for patent published or deemed published under section 122(b), in which the patent or application, as the case may be, names another inventor and was effectively filed before the effective filing date of the claimed invention”.

「特許請求された発明が、151条において発行された特許に記述され、特許出願公開され、あるいは122条(b)において特許出願公開されたとみなされた特許出願に記述されていた場合は、特許を受けることができない。ただし、特許または出願が、他の発明者の氏名を列記し、特許請求された発明の有効出願日以前に有効に出願されていた場合に限る。」

日本の29条の2に類似の規定であるといわれます。

29条の2の説明

29条2とは、先願の明細書や図面に記載されていた発明をクレームに持つ後願は、後願の出願後に先願が出願公開されても拒絶される、という規定です。
この規定は2つの意味で例外規定です。(1)新規性の例外、(2)先願の例外です。

  1. 後願の出願後に先願が公開されているにもかかわらず拒絶します。後願の出願後であろうと、先願が公開されるともはや新技術を公開するものではなくなるからです。ここで先願が公開されるというのは、出願公開されたり、特許公報に掲載されることです。
  2. 先願の明細書、図面に記載されている発明に先願の地位を与えています。通常の先後願は、クレーム同士の発明を比較します。しかし明細書、図面に記載されているということは、それが出願公開されると先行技術になるので、クレームから明細書、図面にまで先願の地位を拡大して後願を拒絶しています。
  3. 29条の2が適用されない場合があります。
    i)発明者が同一である場合、ii)後願の出願時に出願人が同一である場合です。

    i)発明者が明細書や図面に記載していた発明を後でクレームに別に出願した場合に、自分の発明により拒絶されることがないようにしています。

  4. ii)他人の出願を譲り受け、その明細書や図面に記載されていた発明をクレームに入れて出願する場合、この譲り受けた先願により拒絶されないようにしています。

新米国特許法102条(a)(2)は、29条の2の類似の規定です。
「151条において発行された特許に記述され、特許出願公開され」とは、特許査定になり公報に掲載されていた発明、出願公開された発明を指します。
先願がこのような発明であった場合は、後願が拒絶されるという意味で、29条の2と同様の規定です。
しかも、ここには先願のクレームに記載された発明とは規定されていないので、明細書、図面に記載されていた発明でも後願は拒絶されます。
また、特許公報に掲載された時期や出願公開の時期についても規定していないので、後願の後に先願の特許公報が発行されても適用されます。
この意味でも、102条(a)(2)は29条の2に類似の規定です。

以上が米国特許法改正により導入された新規性の規定ですが、これには例外があります。
この例外は、今回導入された「先公表主義と抱き合わせの先願主義」に通じるものです。
既に簡単に上述しましたが、次回は、この詳しい規定の内容に入っていきます。

今週のポイント

  • 米国特許法改正による先願主義は、日本の先願主義のように、先に出願した者が勝つ、という単に出願の早い者勝ちの先願主義ではなく、発明者が先に公表してしまえば、後に第三者が同じ発明を公知にしても、この第三者の公知にした発明は先行技術にならない、という先公表主義との組合せによる先願主義である。
  • 有効出願日以前の1年以内に発明者が他人より先に公表すれば、他人の公表は先行技術みなされない、という1年のグレースピリオドが設けられている。
  • 有効出願日とは、通常の米国出願日と考えれば良いが、パリ条約の優先権主張がされている場合は、優先日つまり第一国出願日を指す。
  • 新102条(a)(1)では、有効出願日前に特許公報に掲載されたり、刊行物に記載された場合等は新規性がないとされ、世界公知が採用されている。
  • 新102条(a)(2)は、特許請求された発明が、151条において発行された特許に記述され、特許出願公開され、あるいは122条(b)において特許出願公開されたとみなされた特許出願に記述されていた場合は、特許を受けることができない、という日本の特許法29条の2類似の規定である。

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