第38回 日米審査ハイウエイ

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日米特許審査ハイウエイ(PPH)が2008年1月から本格的に実施されています。これは日米の特許庁で行われた審査資料を互いの特許庁の審査資料として活用し、審査を促進するという制度です。出願人はPPHにもとづく早期審査を請求します。このとき他方の官庁で引用された引用文献の写しや最新オフィスアクションを提出します。

特許審査ハイウエイ(PPH)

PPHとは、”Patent Prosecution Highway”の略です。日本語では特許審査ハイウエイです。”prosecution”は特許審査を意味します。
日米間で審査ハイウエイが実施されています。しかしこれは日米間に限らず、日本とイギリス、韓国、ドイツ、オーストラリア、欧州その他の多くの国々との間で行われ、日本に限らず、これらの国同士でも行われています。詳細は特許庁Webサイトをご覧下さい。

たとえば、米国に発明Aを出願し、これと同じ発明Aをパリ条約による優先権を主張して日本に出願する場合、米国特許庁での審査で引用された先行技術を日本の特許庁に提出することにより、日本特許庁のサーチ労力が軽減されるため、早期に審査することができます。そしてもう一つ大事なのは、米国特許出願の一つ以上のクレーム(一つのクレームでもよい)が特許可能と判断されていることです。特許査定ができると判断されるクレームがあって初めて、米国での審査資料を提出して、早期審査の請求ができます。
審査促進を望む出願人は、「早期審査に関する事情説明書」を提出します。この事情説明書では、この出願は、対応する米国特許出願に基づくパリ条約による優先権主張をする出願であるため、特許審査ハイウエイによる早期審査を請求する旨を記載し、対応する米国特許出願に対するオフィスアクション(日本の拒絶理由通知にあたる)、特許許可の通知、米国出願に対して引用された文献などを提出します。
さらに、特許可能であると判断された米国出願のクレームと日本出願の対応表を提出します。たとえば以下のような表を早期審査の事情説明書に記載します。
詳しくはWebサイトをご覧下さい()。

本出願の請求項 米国出願で特許可能とされた請求項 対応関係に関するコメント
1 1 両クレームは同一である。
2 2 両クレームは同一である。
3 1 両クレームは記載形式を除き同一である。
4 1 両クレームは記載形式を除き同一である。
5 4 請求項5は、対応する米国出願の請求項1にBという技術的特徴を付加したものである。

日本特許庁Webサイト(「早期審査に関する事情説明書」の記入について(米国))より作成。

特許審査ハイウエイが認められるパターンとしては他にもいくつかあり、たとえば英国に対する特許出願に基づいて優先権主張をして、米国と日本に出願する場合にも、米国の審査資料を提出して早期審査の請求ができます。
米国でのオフィスアクションの翻訳文も提出します。
PCT-PPHという制度もあります。これは、特許協力条約(PCT)による国際出願の国際段階におけるサーチレポートを提出して、各国特許庁で審査促進を請求するものです。つまり国際調査機関による見解書、国際予備審査報告のうち最新のものを提出します。そしてこれらの書面で少なくとも一つの請求項が、特許性有りと判断されていることが早期審査を請求する要件となります。特許性とは新規性、進歩性、産業上利用可能性のことです。但しここで条件となるのは、米国特許庁が国際調査機関、国際予備審査機関となってこれらの見解書や報告書を作成したことが必要です。つまり、日米審査ハイウエイの場合は、米国特許庁が行った審査資料を日本特許庁に提出するため、PCT-PPHでも米国特許庁が審査機関となったことが条件とされます。
国際調査報告のみが発行されているだけでは、PCT-PPHによる早期審査の請求はできません。また国際調査機関の書面による見解の第Ⅷ欄に特許庁の見解が示されているときは、出願人は特許性があることの釈明をする必要があります。釈明をしない場合は、PCT-PPHによる早期審査の請求ができません。

Request Form

PPHによる早期審査の申請書(request form)については、Webサイトをご覧下さい。

“request form”には以下のような文章があります。

“APPLICANT HEREBY REQUESTS PARTICIPATION IN THE PATENT PROSECUTION HIGHWAY(PPH)PROGRAM AND PETITIONS TO MAKE THE ABOVE-IDENTIFIED APPLICATION SPECIAL UNDER THE PPH PROGRAM”.

「出願人はここに、特許審査ハイウエイの参加を申請し、PPHプログラムにおいて上記出願により処理されるよう申し立てる。」

“The above-identified application and the corresponding JP application(s)have the same priority/filing date. If JPO is not the office of first filing(OFF), identify the OFF and the OFF application no. The JP application number(s)is/are:
______________________________________________________

The filing date of the JP application(s)is/are:
______________________________________________________”

上記出願および対応する日本出願は、同一の優先日/出願日を有する。日本特許庁(JPO)が最初に提出した官庁(OFF)でない場合は、OFFおよびOFF出願番号を特定して下さい。日本出願の番号は、
______________________________________________________

日本出願の出願日は、
______________________________________________________

解説

上記の文章はどういう事例を想定しているでしょうか?
日本出願と米国出願で優先日が同じということは、別の国(たとえば英国)に一度出願して、それを第一国出願として優先権主張をして、日本と米国に出願したという事例です。
あるいは日本出願と米国出願で出願日が同じということは、優先権主張をせずに同時に双方の国に出願した場合です。
最初に出願した官庁(OFF)が日本特許庁でない場合は、OFFを記載します。

米国特許庁に提出する添付書類

a.特許査定前の最新の日本特許庁のオフィスアクションの写し(英訳付)
特許査定および英訳を提出する必要はありません。
b.日本オフィスアクションで引用された文献を列挙した情報開示陳述書(IDS)等を提出します。

米国特許庁にも” Claims Correspondence Table”(クレーム対応表)を提出します。

Claims in US Application

米国出願のクレーム

Patentable Claims in JP Application

日本出願で特許可能とされた請求項

Explanation regarding the correspondence

対応関係に関する説明

 

今週のポイント

  • 日米特許審査ハイウエイ(PPH)が2008年1月から本格的に実施されている。これは、日米の特許庁で行われた審査資料を互いの特許庁の審査資料として活用し、審査を促進するという制度である。
  • 出願人はPPHにもとづく早期審査を請求し、他方の官庁で引用された引用文献の写しや最新オフィスアクションを提出する。
  • PPHは日米間に限らず、日本とイギリス、韓国、ドイツ、オーストラリア、欧州その他の多くの国々との間で行われている。
  • 審査促進を望む出願人は、「早期審査に関する事情説明書」を提出する。ここにはクレームの対応表を記載する。つまり、他方の官庁で特許可能とされたクレームと本出願のクレームの対応関係である。双方のクレームが同一であるか、形式のみ異なり実質的に同一であるか、あるいは一方のクレームに技術的特徴を付加したに過ぎないか等を記載する。
  • PCT-PPHH特許は、協力条約(PCT)による国際出願の国際段階におけるサーチレポートを提出して、各国特許庁で審査促進を請求するものである。

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