第21回 先行技術開示義務(IDS)

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今回は改正法からは離れて従来から存在するIDS(情報開示義務)についてお話しします。米国には、出願に関係する者(出願人、代理人等)は知っている先行技術を特許庁に対して開示する義務があります。刊行物等先行技術を特許庁に提出します。

情報開示義務(IDS)とは

IDSは、”Information Disclosure Statement”の略です。出願人やその代理人は、特許出願に関連して、知っている技術を特許庁に開示する義務です。出願人は、そもそも手続を誠実に履行する義務を負っており、これに由来するものです。
37CFR 1.56に規定がありますが、少し長いので区切りながら訳していきます。

37CFR 1.56

(a)A patent by its very nature is affected with a public interest. The public interest is best served, and the most effective patent examination occurs when, at the time an application is being examined, the Office is aware of and evaluates the teachings of all information material to patentability”.

特許出願は本来、公益に関係する。公益は最大限、奉仕されるべきであり、出願が審査される際に、特許庁が特許性に不可欠な全ての情報の教示を知り、これを評価する場合に、最も効率的な審査が行われる。

“Each individual associated with the filing and prosecution of a patent application has a duty of candor and good faith in dealing with the Office, which includes a duty to disclose to the Office all information known to that individual to be material to patentability as defined in this section”.

特許出願を行い、これを遂行することに関与する各人は、特許庁に誠実に対応する義務があり、これには特許庁に対し、その者が知る本条で規定する特許性に不可欠なすべての情報を開示する義務が含まれる。

The duty to disclose information exists with respect to each pending claim until the claim is cancelled or withdrawn from consideration, or the application becomes abandoned.

クレームが取り消され、あるいは審査から除外されるまで、あるいは出願が放棄されるまでは、各係属中のクレームに関して情報を開示する義務が存在する。

Information material to the patentability of a claim that is cancelled or withdrawn from consideration need not be submitted if the information is not material to the patentability of any claim remaining under consideration in the application.

情報が出願の審査中に残りのいずれかのクレームの特許性に不可欠でない場合は、取り消され、審査から除外されたクレームの特許性に不可欠な情報は提出する必要はない。

There is no duty to submit information which is not material to the patentability of any existing claim.

いずれかの現存するクレームの特許性に不可欠でない情報を提出する義務はない。

The duty to disclose all information known to be material to patentability is deemed to be satisfied if all information known to be material to patentability of any claim issued in a patent was cited by the Office or submitted to the Office in the manner prescribed by §1.97(b)-(d)and 1.98.

特許性に不可欠であることが知られたすべての情報を開示する義務は、特許において発行されたいずれかのクレームの特許性に不可欠であることが知られた全ての情報が特許庁により引用され、1.97(b)〜(d)および1.98に規定する方法で特許庁に提出された場合は、充たされたとみなされる。

However, no patent will be granted on an application in connection with which fraud on the Office was practiced or attempted or the duty of disclosure was violated through bad faith or intentional misconduct.

しかし、特許庁に詐欺や未遂を行い、あるいは開示の義務に悪意又は故意の不正行為を介して違反した場合は、いかなる特許も認められない。

The Office encourages applicants to carefully examine:
(1)Prior art cited in search reports of a foreign patent office in a counterpart application, and
(2)The closest information over which individuals associated with the filing or prosecution of a patent application believe any pending claim patentably defines, to make sure that any material information contained therein is disclosed to the Office.
(b)Under this section, information is material to patentability when it is not cumulative to information already of record or being made of record in the application, and
(1)It establishes, by itself or in combination with other information, a prima facie case of unpatentability of a claim; or
(2)It refutes, or is inconsistent with, a position the applicant takes in:
(i)Opposing an argument of unpatentability relied on by the Office, or
(ii)Asserting an argument of patentability.

特許庁は出願人に以下を注意深く検討するように促す。
(1)対応出願の外国特許庁の調査報告書で引用された先行技術
(2)含まれる重大な情報が確実に特許庁に開示されるように、特許出願またはその遂行に関与した者が、いずれかの係属中のクレームが特許的に画定すると確信する最も近接した情報。
(b)本条により、情報は出願の記録にすでにあるか、記録から構成される情報に重複するものでない場合は、情報は特許的に重要である。
(1)当該情報が単独で、あるいは他の情報と組み合わせると、クレームの一見明白な不特許性を立証する場合。
(2)当該情報が出願人が把握している立場に反論するものであり、あるいはこれと矛盾する場合
(i)特許庁が根拠とする不特許性の主張に異議を述べる場合
(ii)特許性の主張をする場合

IDSにより提出する資料

37CFR1.98(a)に規定されています。

  1. 先行特許、公報等
  2. 外国公報、未公開の米国出願の明細書、請求の範囲など、
  3. 非英語文献(特許、公報等)の簡単な説明。これは明細書とは別個であってもよいし、組み込まれていてもよい)。
  4. 非英語文献の英語による翻訳など

IDSの提出時期

i)出願日〜3カ月以内 or最初のオフィスアクション郵送日
無料であり、ステートメントも必要ありません。
ii)i)以降、最終オフィスアクションの郵送日前、特許査定通知、出願の審査を終了させる通知などの時期までにも提出可能ですが、料金がかかり、ステートメントも必要です。
ステートメントは、37CFR 1.97(e)に規定されています。

(1)That each item of information contained in the information disclosure statement was first cited in any communication from a foreign patent office in a counterpart foreign application not more than three months prior to the filing of the information disclosure statement;

IDSに含まれる情報の各項目は、IDS提出の3ヶ月以内に、対応外国出願につき外国特許庁に発行されたいずれかの通知で最初に引用されたものであること。

(2)That no item of information contained in the information disclosure statement was cited in a communication from a foreign patent office in a counterpart foreign application, and, to the knowledge of the person signing the certification after making reasonable inquiry, no item of information contained in the information disclosure statement was known to any individual designated in § 1.56(c)than three months prior to the filing of the information disclosure statement.

IDSに含まれる情報のいずれの項目も、対応国出願において、外国特許庁が発行したいずれの通知の中で引用されたものではなく、証明書に署名した者の知る限りにおいて、適切な問合わせ行った後にIDSに含まれる情報のいずれの項目も、IDSの提出前3ヶ月以上前に、37CFR1.56(c)に規定されたいずれの者も知らなかったこと。

*37CFR1.56(c)については後述。

解説

IDSはできる限り早く提出するのが原則です。特許出願から3ヶ月を超えてIDSを提出する場合は、IDS提出前3ヶ月以上前は知らなかった技術であることを陳述します。

IDSの義務がある者

IDSの義務があるのは、出願やその遂行に関与した者です。これについては37CFR1.56(c)に規定があります。

c)Individuals associated with the filing or prosecution of a patent application within the meaning of this section are:
(1)Each inventor named in the application;
(2)Each attorney or agent who prepares or prosecutes the application; and
(3)Every other person who is substantively involved in the preparation or prosecution of the application and who is associated with the inventor, with the assignee or with anyone to whom there is an obligation to assign the application.

特許出願またはその遂行に関与した者とは、
(1)出願中に氏名を列記された各発明者
(2)出願を作成し、または遂行する各弁護士または弁理士
(3)出願の作成または遂行に実質的に関与し、かつ発明者、譲受人、出願を譲渡する義務がある相手方である他のすべての者

今週のポイント

  • IDSは、出願人やその代理人など特許出願に関与した者が知っている技術を特許庁に開示する義務である。
  • 出願人には、そもそも手続を誠実に履行する義務を負っており、IDSはこれに由来するものである。
  • 出願に関与する者が知る特許性に不可欠なすべての情報を開示する義務がIDSには含まれる。
  • クレームが取り消され、あるいは審査から除外されるまで、あるいは出願が放棄されるまでは、各係属中のクレームに関して情報を開示する義務が存在する。
  • IDSは、出願から3ヶ月までは、無料でステートメントなしで提出できる。それ以降は、最終アクション、査定通知等より以前に提出できるが、費用がかかり、ステートメントが必要である。
  • 「特許出願またはその遂行に関与した者」とは、発明者、出願を作成し、または遂行する各弁護士または弁理士、譲受人、譲渡される者などである。

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