第15回 米国特許法改正ニュースと新規性、進歩性

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今週の米国特許法の最新トピックといえば、米国特許法改正法案であるLeahy-Smith America Invents Actにオバマ大統領が9/16にサインしたということです(Leahy-Smith America Invents Act Implementation)。
以前からいわれていた先願主義への移行を盛り込んだ重要なこの改正案は今年6月に下院を通過し、9月には上院を通過しました。これに伴い米国特許制度は大きく変わることとなります。直近の大きな影響としては、署名から10日以降は、すべての料金に15%の追加料金が課されることとなっています。したがって支払うべき費用がある場合、たとえば特許の年金などは、追加料金が課される前に前倒しで支払っておくことをお勧めします。
改正点についてはこのブログでも追々ご紹介していくこととします。
とりあえず、今回は、現在の法律で特許要件を説明したいと思います。新規性、進歩性について説明します。米国特許法102条、103条に規定されており、この条文も改正があるのですが(米国国内の公知、公用から世界での公知、公用に広げられます。”effective filing date”(有効出願日)という概念が規定されます)、まず現在の法律を踏まえるという意味で、現行法から説明し、改正点は次回に譲ります。

新規性

35 U.S.C. 102 Conditions for patentability; novelty and loss of right to patent.

A person shall be entitled to a patent unless –
(a)the invention was known or used by others in this country, or patented or described in a printed publication in this or a foreign country, before the invention thereof by the applicant for a patent.

米国特許法102条特許要件、新規性および特許を取得する権利の喪失
(a)特許出願人による発明以前に、この国(米国)で第三者により知られ、あるいは使用された発明、あるいはこの国または外国で特許され、または刊行物に記載された発明は特許を受けることができない。

解説

既に知られ、特許されている発明、刊行物に記載されている発明は特許されない、という条文です。我が国は先願主義であるため、出願前に知られた発明は特許されないとなっています。

米国特有のワンイヤー・ルール(one year rule)

米国特許法には、ワンイヤー・ルールという米国特有のものがあります。」

35USC102(b)

“the invention was patented or described in a printed publication in this or a foreign country or in public use or sale in this country, more than one year prior to the date of the application for patent in the United States”

「発明が、米国における特許出願日より1年以上前に、当該国、あるいは外国で特許され、あるいは刊行物に記載され、あるいは当該国で公然と使用され、販売されていた場合は、特許を受けられない。」

解説

102条(a)は、発明がされる以前に公知、公用(公然と使用)、特許され、刊行物に掲載されていた場合は特許されない、と規定されていましたが、ここでは発明がされる以後であっても、特許出願の1年以上前に特許され、刊行物に記載され、公用、販売されていた場合も特許を受けられない、と規定されています。
逆にいうと、特許出願がされる直前に公用等になっても、出願前1年以内であれば、それが理由で特許が拒絶されることはないのです。公用等になってから1年以上も出願しないでおいたものは認められず、1年以内にすぐ出願したものは認められる、ということなのでしょう。

102条(d)

“the invention was first patented or caused to be patented, or was the subject of an inventor’s certificate, by the applicant or his legal representatives or assigns in a foreign country prior to the date of the application for patent in this country on an application for patent or inventor’s certificate filed more than twelve month before the filing date of the application in the United States”

「発明が、米国における当該特許出願日の12ヶ月以上前に出願された特許出願、発明者証出願に基づいて、当該特許出願日より以前に、出願人、その代理人、譲受人により外国において特許され、特許を受けられるように手続が行われ、発明者証出願の対象とされていた場合は、特許を受けられない。」

解説

これは本人によりその出願より1年以上前に米国で出願されたものが、それにもとづいてその出願日以前に外国で特許された場合は、特許を受けられないことを定めています。
“known or used”(知られ、あるいは使用され)とは何を意味するでしょうか?
これは字義通り、第三者により知られ、あるいは使用される、という良いです。そしてここで必要なことは、”deliberate attempt”(慎重な試み)があるかどうかです。これがない場合は公衆が利用可能な知識、使用であるとされます。MPEP2132に以下のように規定があります。

“The statutory language ‘known or used by others in this country'(35 U.S.C. § 102(a)), means knowledge or use which is accessible to the public.” Carella v. Starlight Archery, 804 F.2d 135, 231 USPQ 644(Fed. Cir. 1986)”.

「法律上の文言である「この国で知られ、あるいは使用され」は、公衆に利用可能な知識または使用を意味する。」

“The knowledge or use is accessible to the public if there has been no deliberate attempt to keep it secret. W. L. Gore & Assoc. v. Garlock, Inc., 721 F.2d 1540, 220 USPQ 303(Fed. Cir. 1983)”.

「知識または使用は、秘密にしようとする慎重な試みがない場合は、公衆が利用可能な知識又は使用である。」

進歩性

先行技術(prior art)からみて想到可能ではない、という特許要件の一つであり、実務上、最も良く用いられる条文です。35USC103には規定されています。

(a)A patent may not be obtained though the invention is not identically disclosed or described as set forth in section 102 of this title, if the differences between the subject matter sought to be patented and the prior art are such that the subject matter as a whole would have been obvious at the time the invention was made to a person having ordinary skill in the art to which said subject matter pertains. Patentability shall not be negatived by the manner in which the invention was made.

「発明は、102条で規定されたように完全に同じように開示、又は記載されていない
ものの、特許を受けようとする主題と、先行技術の主題との差異が全体として、当該主題が関連する技術分野における通常の知識を有する者にとって、発明時点において自明であったときは、特許を取得することができない。特許性は、発明がなされた手法によっては否定されないものとする。」

解説

新規性は先行技術と同一である場合に適用されますが、非自明性は、先行技術と同一でなくても、先行技術からみて自明である場合に適用されます。”subject matter”(発明の主題)は、米国特許実務では頻繁に使われる用語です。

今週のポイント

  • 先願主義を盛り込んだ米国特許法改正法案であるLeahy-Smith America Invents Actにオバマ大統領が9/16に署名し、米国特許制度は大きく変わることとなった。
  • 特許要件である新規性(35USC103)、進歩性(35USC103)は、前者が公知技術と同一の発明につき適用され、後者は公知技術とは同一ではないが、これをもとに自明である場合に適用される。
  • “known or used”(知られ、あるいは使用され)とは、「第三者により知られ、あるいは使用される」という意味であり、”deliberate attempt”(慎重な試み)がない場合は公衆が利用可能な知識、使用であるとされる。

特許翻訳のお問い合わせはインターブックスにどうぞ

技術背景を持ち、それぞれの国の法制度の事情を理解したネイティブ翻訳者が翻訳を担当いたします。
日本特許庁・米国特許商標庁・欧州特許庁・中国特許庁・韓国特許庁の出願要件に則って特許明細書を翻訳し、お客様のご要望にお応えいたします。
電話番号 03-5212-4652
お問合せはこちら

関連する記事