第12回 仮出願(provisional application)について(続き)

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仮出願は米国における国内優先権主張といわれ、出願日確保のためにクレームを添付せずに明細書、図面を提出し(論文でも可)、費用も安価です。”Provisional Application for Patent Cover Sheet“に明細書、図面を添付して提出します。
しかし仮出願日から1年以内に通常の出願をする必要があり、これをしないと仮出願は放棄したものとみなされます。
関連条文を拾ってみましょう。

仮出願が放棄とみなされる場合

35 USC 111

(b)”(5)ABANDONMENT.-Notwithstanding the absence of a claim, upon timely request and as prescribed by the Director, a provisional application may be treated as an application filed under subsection(a). Subject to section 119(e)(3)of this title, if no such request is made, the provisional application shall be regarded as abandoned 12 months after the filing date of such application and shall not be subject to revival after such 12-month period”.

「(b)(5)放棄
クレームがないにもかかわらず、適切な時期に請求することにより、かつ特許庁長官の指示により、仮出願は(a)項によりされた出願(つまり通常出願)として扱われる。本法119条(e)(3)に従うことを条件として、かかる要求がされなかった場合は、仮出願はかかる出願日後12ヶ月で放棄されたものとみなされ、当該12ヶ月の期間の後は回復することはない。」

解説

仮出願から通常出願への変更要求がされなかった場合は、仮出願は取り下げたものとみなされます。変更要求がされれば通常出願として扱われます。
USC35 119(e)(3)とは以下の条文です。つまり12ヶ月経過日が休日に当たる場合は、次の営業日まで延長されるという規定です。

“(3)If the day that is 12 months after the filing date of a provisional application falls on a Saturday, Sunday, or Federal holiday within the District of Columbia, the period of pendency of the provisional application shall be extended to the next succeeding secular or business day”.

「仮出願の出願日以後、12ヶ月経過した日が土曜日、日曜日、あるいはコロンビア地区のアメリカ連邦祝日にあたる場合は、仮出願係属の期間は、次の営業日まで延長されるものとする。」

存続期間について

35USC 154(a)(2)

(2)TERM.-Subject to the payment of fees under this title, such grant shall be for a term beginning on the date on which the patent issues and ending 20 years from the date on which the application for the patent was filed in the United States or, if the application contains a specific reference to an earlier filed application or applications under section 120, 121, or 365(c)of this title, from the date on which the earliest such application was filed.

期間:本法による料金の支払いを条件として、かかる特許の許可は、特許が発行する日から起算し、当該特許のための出願が米国で提出された日から20年間で終了するものとする。あるいは本法120条、121条、365条(c)による出願が先に提出された出願に対する特定の言及を含んでいる場合は、当該出願の最先のものが提出された日から起算する。

解説

これは特許の存続期間は特許の発行日から起算し、出願日から20年で終了することを規定した条文です。つまり、実際に特許権が発生するのは特許の発行日からですが、存続期間は出願日から20年で終了します。つまり出願から特許発行までは特許権は発生していませんが、存続期間の20年はその間も進行していることになります。
この条文は仮出願の存続期間も規定しています。120条という条文です。以下に訳を示していますが、仮出願をもとに通常出願をした場合、つまり「先に提出した出願に対する特定の言及を含んでいる」というのは、先にされた仮出願に対し通常出願が言及するように補正することです。このとき存続期間は通常出願から起算されます。したがって仮出願から12ヶ月後に通常出願をした場合は、仮出願の存続期間は21年となります。
これに対し、仮出願を通常出願に変更した場合は、存続期間は仮出願日から起算されます。

仮出願の利益を受けるための補正

35USC 120 Benefit of earlier filing date in the United States
(米国における先の出願の利益)

“No application shall be entitled to the benefit of an earlier filed provisional application under this subsection unless an amendment containing the specific reference to the earlier filed provisional application is submitted at such time during the pendency of the application as required by the Director. The Director may consider the failure to submit such an amendment within that time period as a waiver of any benefit under this subsection. The Director may establish procedures, including the payment of a surcharge, to accept an unintentionally delayed submission of an amendment under this subsection during the pendency of the application”.
「いずれの出願も、先に提出された仮出願に対する特定の言及を含む補正が、特許庁長官が要求する通りに、出願の係属中のこうした時に提出されなければ、本項による先に提出された仮出願の利益を受けることができない。かかる補正を当該期間内に提出しない場合は、特許庁長官は、本項によるあらゆる利益の放棄としてみなすことができる。特許庁長官は、出願の係属中に本項よる補正が意図的でない遅れた補正を受け取るために、追加料金の支払いを含めた手続を定めることができる。」

解説

これは先の出願の利益を受けることを規定した条文ですが、仮出願が先になされ、その後通常の出願をした場合も長官の要求により、先の出願である仮出願の利益を受けることの補正が必要な場合には、それに従い補正期間内に補正する必要があります。これをしないと仮出願の利益が受けられないこととなります。

通常出願への変更にはクレームを含めること

MPEP601.01(c)

“A request to convert a provisional application to a nonprovisional application must be accompanied by the fee set forth in § 1.17(i)and an amendment including at least one claim as prescribed by the second paragraph of 35 U.S.C. 112, unless the provisional application under paragraph(c)of this section otherwise contains at least one claim as prescribed by the second paragraph of 35 U.S.C. 112.”
「仮出願を通常出願に変更する請求は、CFR 1.17(i)に規定する料金の支払い、本条(c)項による仮出願が、米国特許法112条2項により規定された少なくとも一つのクレームを含んでいない場合、米国特許法112条第2項に規定された少なくとも一つのクレームを含める補正を伴うものとする。

コメント

仮出願がクレームを一つも含んでいない場合には、通常出願に変更する際に、少なくとも一つのクレームを含める必要があります。
料金は37 CFR1.17(i)に規定されています。
米国特許法112条2項とは、
“The specification shall conclude with one or more claims particularly pointing out and distinctly claiming the subject matter which the applicant regards as his invention”.
(明細書は、出願人が発明とみなす主題を特に指摘し、かつ明確に特許請求する1又は複数のクレームで完結するものとする。」というクレームの要件を規定した条文です。仮出願から通常出願への変更時には、この条文に適合したクレームを提出する必要があります。つまり通常出願と同様のクレームを提出します。但しこれは仮出願でクレームが提出されていなかった場合です。

出願料金など

37 CFR 1.53(3)

“The nonprovisional application resulting from conversion of a provisional application must also include the filing fee, search fee, and examination fee for a nonprovisional application, an oath or declaration by the applicant pursuant to § 1.63, 1.162, or 1.175, and the surcharge required by § 1.16(f)if either the basic filing fee for a nonprovisional application or the oath or declaration was not present on the filing date accorded the resulting nonprovisional application(i.e., the filing date of the original provisional application)”.

仮出願の変更の結果生じた通常出願は、結果として生じる通常出願の出願日と認められた日(すなわち、もとの仮出願の出願日)に、通常出願のための基本出願料金、宣誓書又は宣言書が存在しなかった場合は、通常出願の出願料金、調査費用、審査費用、CFR1.63, 1.162, 1.175による出願人の宣誓書及び宣言書、及び1.16(f)による追加料金を含んでいる必要がある。

解説

通常出願は、oathやdeclarationを含む必要があります。発明者の氏名や国籍などを記載するものです。
“surcharge”は、出願日より遅くbasic fee, search fee, examination fee, oathなどを提出する場合に必要とされる追加料金です。

通常出願への変更請求の時期

37CFR 1.53(3)

“A request to convert a provisional application to a nonprovisional application must also be filed prior to the earliest of:
(i)Abandonment of the provisional application filed under paragraph(c)of this section; or
(ii)Expiration of twelve months after the filing date of the provisional application filed under paragraph(c)of this section”.
仮出願を通常出願に変更する請求は、以下のうち最先のものより以前に提出する必要がある。

(i)本条(c)により提出された仮出願の放棄
(ii)本条(c)により提出された仮出願の出願日から12ヶ月満了時

コメント

仮出願の本出願への変更は、仮出願日から遅くとも12ヶ月以内にはする必要があります。それ以前に仮出願の放棄がされる場合は、そのときまでに請求します。放棄がない場合は、仮出願日から12ヶ月以内です。

優先権の利益など

37CFR 1.53(4)

“A provisional application is not entitled to the right of priority under 35 U.S.C. 119 or 365(a)or § 1.55, or to the benefit of an earlier filing date under 35 U.S.C. 120, 121 or 365(c)or § 1.78 of any other application. No claim for priority under 35 U.S.C. 119(e)or § 1.78(a)(4)may be made in a design application based on a provisional application. No request under § 1.293 for a statutory invention registration may be filed in a provisional application.”.

「仮出願は、米国特許法119条又は365(a)又はCFR1.55による優先権の利益を受けることはできず、米国特許法120条、121条、365条(c)又はCFR1.78による先の出願日の利益を受けることもできない。仮出願に基づいて意匠特許出願をして、米国特許法119条(e)又はCFR1.78(a)(4)による優先権を主張することができない。仮出願において、法定発明登録のためのCFR1.293による主張をすることができない。」

コメント

米国特許法119条は、パリ条約による優先権主張を規定しており、パリ条約同盟国のある国にされた出願を基に、優先権を主張して米国に出願すると、その基礎となる外国に出願された日を基準に新規性、進歩性等が判断されるという規定です。
365条(a)は、米国以外の国を指定国としてPCTによる国際出願がなされ、これに基づいて米国に優先権主張をして特許出願をした場合に、優先権の利益を受けられる(基礎となる国際出願日を基準に新規性、進歩性等が判断される)という規定です。
仮出願についてはこれらの利益を受けられず、優先権主張して仮出願することはできません。
米国特許法120条とは、先の出願が放棄等された場合に、同一出願人による後の出願が先の出願日にされたという利益を受けられるという規定です。
121条とは、限定要求により限定された発明は、先の出願日の利益を受けられるという規定です。365条(c)とは、国際出願で米国を指定し、その後、米国を指定して国際出願がされた場合に、先の出願が放棄等された場合は、先の出願時にされたものとみなされるという規定です。仮出願はこのような出願日の利益を受けられません。
つまり、仮出願はパリ条約による優先権主張をして出願することはできません。また、仮出願に基づき意匠特許出願をすることもできません。
また仮出願は法定発明登録の対象とすることもできません。

参考 法定発明登録の条文

§ 1.293 Statutory invention registration.
(a)An applicant for an original patent may request, at any time during the pendency of applicant’s pending complete application, that the specification and drawings be published as a statutory invention registration. Any such request must be signed by(1)the applicant and any assignee of record or(2)an attorney or agent of record in the application.

「1.293 法定発明登録
(a)原特許の出願人は、出願人の完全な出願の係属中いつでも、法定発明登録として明細書及び図面を公開することを請求できる。かかる請求は(1)出願人、記録にある譲受人、又は(2)当該出願の記録にある弁護士又は弁理士が署名することができる。」

解説

つまり法定発明登録とは、明細書、図面を出願中に公開することにより、公知技術としていまい、特許を取得することを放棄する手続です。公知にすれば、第三者はこれを特許することができなくなります。」

宣誓書など

37CFR 1.63

(a)An oath or declaration filed under § 1.51(b)(2)as a part of a nonprovisional application must:

「通常出願の一部として、37CFR1.51(b)(2)により提出された宣誓書又は宣言は、以下のものを含んでいる必要がある。」

(1)Be executed, i.e., signed, in accordance with either § 1.66 or § 1.68. There is no minimum age for a person to be qualified to sign, but the person must be competent to sign, i.e., understand the document that the person is signing;

「署名されたものであること。すなわち、37CFR1.66又は1.68のいずれかにより署名されたものであること。署名する権限のある者の最低年齢はないが、署名者は署名する能力があること、すなわちその者が署名している書類を理解する能力があること。」

(2)Identify each inventor by full name, including the family name, and at least one given name without abbreviation together with any other given name or initial;

「苗字を含めたフルネーム、及び他の所定の氏名又はイニシャルと共に、略称ではない少なくとも一人の所定の氏名により各発明者を特定すること。」

(3)Identify the country of citizenship of each inventor; and

「各発明者の市民権を有している国を特定すること。」

(4)State that the person making the oath or declaration believes the named inventor or inventors to be the original and first inventor or inventors of the subject matter which is claimed and for which a patent is sought.

「宣誓又は宣言している者が、列挙された一人又は複数の発明者が、特許請求され、かつ特許を受けようとする主題の最初であって第一の一人又は複数の発明者であると確信していることの陳述。」

(b)In addition to meeting the requirements of paragraph(a)of this section, the oath or declaration must also:

本条(a)項の要件を満たすことに加え、宣言又は宣誓書は、以下のものを含んでいる必要がある。

(1)Identify the application to which it is directed;

「宣誓又は宣言書が対象とする出願の特定。」

(2)State that the person making the oath or declaration has reviewed and understands the contents of the application, including the claims, as amended by any amendment specifically referred to in the oath or declaration; and

「宣言又は宣誓する者が、宣誓又は宣言書で特に言及された補正書により補正された、クレームを含む出願の内容を検討し、かつ理解しているという陳述。

(3)State that the person making the oath or declaration acknowledges the duty to disclose to the Office all information known to the person to be material to patentability as defined in § 1.56.

「宣言又は宣誓する者が、37CFR 1.56で規定された特許性に欠かせないその者が知っている全ての情報を特許庁に開示する義務を承認している、という陳述。

解説

37CFR 1.56とは、情報開示義務であり、対応する出願に対して外国の特許庁で引かれた引例や近接する技術を米国特許庁に開示する、という発明者、代理人等の義務です。仮出願に基づく通常出願についてはこの義務が課せられるということです。

(c)Unless such information is supplied on an application data sheet in accordance with § 1.76, the oath or declaration must also identify:

「以下の情報が37CFR1.76による出願データシートで与えられていない限り、宣誓又は宣言書は以下のものを特定する必要がある。」

(1)The mailing address, and the residence if an inventor lives at a location which is different from where the inventor customarily receives mail, of each inventor; and
(2)Any foreign application for patent(or inventor’s certificate)for which a claim for priority is made pursuant to § 1.55, and any foreign application having a filing date before that of the application on which priority is claimed, by specifying the application number, country, day, month, and year of its filing.

(1)発明者が通常、各発明者の郵便を受信する場所とは異なる場所に居住している場合、郵送先の住所及び居所。
(2)出願番号、出願の国、年月日を特定することにより、優先権主張が37CFR1.55によりされたいずれかの外国特許出願(あるいは発明者証)、及び優先権主張された出願の出願日より以前の出願日を有するいずれかの外国出願。

解説

仮出願に基づき通常出願をする際には、優先権主張をすることができます。この場合は、宣誓又は宣言書が基礎となる出願の出願番号、出願された国、出願年月日を含む必要があるという規定です。

今週のポイント

  • 仮出願日から12ヶ月以内に通常出願への変更要求がされなかった場合は、仮出願は取り下げたものとみなされる。
  • 仮出願を基礎として通常出願をした場合の特許の存続期間は、特許の発行日から開始し、仮出願日から通常の出願から20年で終了する。
  • パリ条約による優先権主張をして仮出願することはできない。
  • 仮出願に基づき意匠特許出願をすることもできない。
  • 仮出願の通常出願への変更は、仮出願日から遅くとも12ヶ月以内にはする必要がある。それ以前に仮出願の放棄がされる場合は、そのときまでに請求する。

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