第11回 仮出願(provisional application)について

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仮出願は、出願日を確保しておくために、クレームを提出せずに、明細書により仮の出願をしておくもので、論文等の提出でも認められます。カバーシートを提出も要求されます(カバーシートのフォームについては添付資料参照)。しかし仮出願は1年以内に通常の出願に変更するなどの必要があり、これをしないと仮出願は取り下げたものとみなされます。
なお仮出願ではIDS(情報開示陳述書)の提出は必要とされません。

仮出願に必要な書類

仮出願に必要な書類は35CFR1.51(c)に規定されています。

35CFR1.51(c)

(c)A complete provisional application filed under § 1.53(c)comprises:
(1)A cover sheet identifying:
(i)The application as a provisional application,
(ii)The name or names of the inventor or inventors,(see § 1.41(a)(2)),
(iii)The residence of each named inventor,
(iv)The title of the invention,
(v)The name and registration number of the attorney or agent(if applicable),
(vi)The docket number used by the person filing the application to identify the application(if applicable),
(vii)The correspondence address, and
(viii)The name of the U.S. Government agency and Government contract number(if the invention was made by an agency of the U.S. Government or under a contract with an agency of the U.S. Government);
(2)A specification as prescribed by the first paragraph of 35 U.S.C. 112, see § 1.71;
(3)Drawings, when necessary, see §§ 1.81 to 1.85; and
(4)The prescribed filing fee and application size fee, see § 1.16.

1.53(c)に規定される完全な仮出願は以下のものを含む。
(1)以下を特定したカバーシート:
(i)仮出願としての出願
(ii)発明者(一人又は複数)の氏名
(ⅲ)列挙された各発明者の住所
(ⅳ)発明の名称
(ⅴ)(該当する場合)弁護士又は弁理士の氏名及び登録番号
(ⅵ)(該当する場合)出願を特定するために、出願する者により使用される事件整理番号
(ⅶ)通知のためのあて名
(ⅷ)米国政府機関の名称又は機関電話番号(発明が米国政府の機関を通して、あるいは米国政府機関との契約にされた場合)
(2)明細書
(3)図面
(4)所定の出願料金及び出願サイズ料金

仮出願の料金

仮出願のfiling fee(出願料金)は220US$であり、小規模団体については110US$です。
US PTO Webサイトにより料金を確認できます。
d)Basic fee for filing each provisional application:

  • By a small entity(§ 1.27(a))
    $110.00
  • By other than a small entity
    $220.00
  • Provisional Application Size Fee – for each additional 50 sheets that exceeds 100 sheets 270.00(135.00)
    (仮出願サイズ料金―100枚を超え50枚毎に270US$(小規模団体は135US$)

仮出願の関連条文

37CFR 1.53

“Application filing requirements — Provisional application. The filing date of a provisional application is the date on which a specification as prescribed by the first paragraph of 35 U.S.C. 112, and any drawing required by § 1.81(a)are filed in the Patent and Trademark Office. No amendment, other than to make the provisional application comply with the patent statute and all applicable regulations, may be made to the provisional application after the filing date of the provisional application”.

「出願要件―仮出願
仮出願の出願日は、米国特許法112条第1項で規定された明細書及び1.81(a)で要求される図面が米国特許商標庁(US PTO)に提出された日である。仮出願を特許法及び全ての適用される規則に適合させるための補正を除いて、いかなる補正も仮出願の出願日以後にすることはできない。」

解説

仮出願の出願日は明細書、図面を特許庁に提出した日です。クレームは必要とされません。補正は原則としてできません。

“A provisional application must also include the cover sheet required by § 1.51(c)(1), which may be an application data sheet(§ 1.76), or a cover letter identifying the application as a provisional application. Otherwise, the application will be treated as an application filed under paragraph(b)of this section”.

「仮出願は、CFR1.51(c)(1)で要求されるカバーシートを含んでいる必要があり、これは出願データシート(CFR 1.76)であってもよく、あるいは、仮出願として出願を特定するカバーレターであってもよい。これをしないと、出願は、本条の(b)によりされた出願とみなされる。」

解説

カバーシート(CFR1.51(c)(1)は既に上記で説明した発明者の氏名、発明の名称等を記載した書面です。フォーマットについては、US PTO Webサイトをご覧下さい。
カバーシートあるいは出願データシートを提出しないと、(b)項によりされた出願とみなされる、というのは、通常出願(非仮出願)とみなされるということです。
出願データシートとは出願の”biographic data”を記載した書類です。CFR 1.76に規定があります。

“Application data sheet.
An application data sheet is a sheet or sheets, that may be voluntarily submitted in either provisional or nonprovisional applications, which contains bibliographic data, arranged in a format specified by the Office. An application data sheet must be titled “Application Data Sheet” and must contain all of the section headings listed in paragraph(b)of this section, with any appropriate data for each section heading”.

「出願データシート
出願データシートは、仮出願又は非仮出願のいずれかについて自発的に提出することができ、特許庁が指定するフォーマットに配置された書誌的データを含むものである。「出願データシート」というタイトルとして、本条の(b)項に列挙された項目のタイトルを、各項目についての該当するデータと共に含んでいなければならない。」

解説

(b)項に列挙された項目とは、出願情報(発明者名、発明の名称等)、通知情報、優先権情報、代理人情報などです。要するに出願データシートも出願の書誌的事項を記載した書面です。フォームはUS PTO Webサイトをご覧下さい(http://www.uspto.gov/forms/sb0014_fill.pdf)。

37 CFR 1.53 Application number, filing date, and completion of application
(37 CFR 1.53 出願番号、出願日、出願の完了)
仮出願の通常出願への変更

“An application for patent filed under paragraph(b)of this section may be converted to a provisional application and be accorded the original filing date of the application filed under paragraph(b)of this section. The grant of such a request for conversion will not entitle applicant to a refund of the fees that were properly paid in the application filed under paragraph(b)of this section. Such a request for conversion must be accompanied by the processing fee set forth in § 1.17(q)and be filed prior to the earliest of:…”

「本条(b)項によりされた特許出願(仮出願)は仮出願に変更でき、本条(b)によりされた出願の原出願日が認められる。かかる変更要求の許可は、本条(b)によりされた出願において適切に支払われた料金の払い戻しを受ける権利を出願人に与えない。かかる変更請求は、1.17(q)に規定された手数料の支払いを伴い、以下のものうち最先より以前に提出する必要がある。

解説

(b)項によりされた出願とは通常出願のことです。これを仮出願に変更することができ、出願日は通常出願の出願日となります。しかし通常出願のために支払った費用の返還を要求できません。変更要求をいつまでにすべきかについては以下に説明します。

“(i)Abandonment of the application filed under paragraph(b)of this section;

本条(b)項によりされた出願の放棄

(ii)Payment of the issue fee on the application filed under paragraph(b)of this section;

本条(b)項によりされた出願の発行料の支払い

(iii)Expiration of twelve months after the filing date of the application filed under paragraph(b)of this section; or

本条(b)項によりされた出願の出願日から12ヶ月の期間内

(iv)The filing of a request for a statutory invention registration under § 1.293 in the application filed under paragraph(b)of this section.

本条(b)項によりされた出願のCFR1.293による法定発明登録の請求日

コメント

「法定発明登録」とは、特許を受けずに、これを受ける権利を放棄して、発明を公開することを請求する手続です。すなわち、特許は受けられないが、発明を公開してしまえば他人は特許を取得できないからです。
出願を放棄したり、発行料の支払い、法定発明登録等より前に仮出願に変更させるというための規定です。また仮出願日への変更は、もとの出願日から12ヶ月以内に変更されるような規定となっています。出願の放棄、発行料等の支払いがそれ以前に行われる場合は、その最も早い日、12ヶ月経過後に行われる場合は、12ヶ月経過した時までされる必要があります。

37CFR 1.53M

“A provisional application filed under paragraph(c)of this section may be converted to a nonprovisional application filed under paragraph(b)of this section and accorded the original filing date of the provisional application”.

「本条(c)項によりされた仮出願は、本条の(b)項によりされた通常出願に変更することができ、仮出願のもとの出願日が認められる。」

“The conversion of a provisional application to a nonprovisional application will not result in either the refund of any fee properly paid in the provisional application or the application of any such fee to the filing fee, or any other fee, for the nonprovisional application”.

「仮出願の通常出願に対する変更は、仮出願で適切に支払われたいずれの費用の払い戻しも生じさせず、かかる費用の出願費用、その他の通常出願のための費用に対する充当も生じさせない。」

コメント

仮出願で支払われた費用を通常出願に充当することはできません。仮出願の費用を払い戻すこともできません。

“Conversion of a provisional application to a nonprovisional application under this paragraph will result in the term of any patent to issue from the application being measured from at least the filing date of the provisional application for which conversion is requested”.

「本項における仮出願の通常出願への変更により、その出願から発行されるいかなる特許の期間も、少なくとも変更が請求される仮出願の出願日から起算される。」

コメント

仮出願を通常出願に変更することにより、特許の期間は仮出願の出願日から起算されます。これが仮出願のポイントです。

“Thus, applicants should consider avoiding this adverse patent term impact by filing a nonprovisional application claiming the benefit of the provisional application under 35 U.S.C. 119(e)(rather than converting the provisional application into a nonprovisional application pursuant to this paragraph)”.

したがって出願人は、(本項により仮出願を通常出願に変更するよりむしろ)米国特許法119条(e)により仮出願の利益を主張する通常出願を提出することによる特許期間の不利益を回避することを検討する必要がある。

解説

仮出願をした後、(i)この利益を主張して通常出願をするという方法と、(ii)仮出願を通常出願に変更するという方法があります。(i)の場合は、特許の期間は通常出願の日から起算されます。(ii)の場合は仮出願の日から起算されるため、存続期間の不利益(短くなること)を考慮して、(i)通常出願を方法を検討したらどうか、と規定しています。

米国特許法119条(e)とは

(1)An application for patent filed under section 111(a)or section 363 of this title for an invention disclosed in the manner provided by the first paragraph of section 112 of this title in a provisional application filed under section 111(b)of this title, by an inventor or inventors named in the provisional application, shall have the same effect, as to such invention, as though filed on the date of the provisional application filed under section 111(b)of this title, if the application for patent filed under section 111(a)or section 363 of this title is filed not later than 12 months after the date on which the provisional application was filed and if it contains or is amended to contain a specific reference to the provisional application.

抄訳と解説

これは仮出願の利益を主張する通常出願について規定した条文です。通常出願が仮出願がされた日から12ヶ月以内にされ、かつこれが仮出願に対する特定の言及を含むか、これを含むように補正された場合は、111条(b)によりされた仮出願の日にされたと同様の効果を有する、という規定です。
なお、米国特許法111条(a)は通常出願、同条(b)は仮出願を規定しています。
また、米国特許法363条は、国際出願について規定しています。つまり特許協力条約(PCT)による米国を指定した国際出願です。

35 U.S.C. 363 International application designating the United States:Effect.
An international application designating the United States shall have the effect, from its international filing date under article 11 of the treaty, of a national application for patent regularly filed in the Patent and Trademark Office except as otherwise provided in section 102(e)of this title.

「米国を指定する国際出願は、条約11条による国際出願日から、US PTOに正規に出願された国内特許出願の効果を有するものとする(本法102条(e)で定める場合を除く)」

コメント

要するに、仮出願をして12ヶ月以内に、仮出願の利益を主張して通常出願をするか、米国を指定した国際出願をすると、仮出願の日に出願したものとみなされる、という効果が与えられます。国際出願は国際出願日に米国に正規に出願されたものとみなされるため、通常の出願と同様に考えることができます。

今週のポイント

  • 仮出願(provisional application)は、出願日確保のために明細書(論文等でも可)により仮の出願をしておくための制度である。クレームの提出も必要とされない。
  • 仮出願の出願日は明細書、図面を特許庁に提出した日である。クレームは必要とされない。
  • 仮出願は、カバーシート、あるいは出願データシートをと共に出願する必要がある。これらの書類には出願の書誌的事項(発明者名、発明の名称等)を記載する必要がある。
  • 仮出願を通常出願に変更することにより、特許の期間は仮出願の出願日から起算される。
  • 仮出願の利益を主張して仮出願日から12ヶ月以内に通常出願をするという方法がある。この場合は、特許の期間は通常出願の日から起算される。

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