第8回 意匠特許について(続き)

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意匠特許(Design Patent)を更に詳しく見ていきましょう。
今回は、意匠の中で特に”Changeable Computer Generated Icons”(変化するコンピュータ生成アイコン)と”Type Font”(タイプフォント)、セットものの意匠特許が米国実務上どのように扱われているかをMPEPを訳しながら説明します。

MPEP1504.01
IV.CHANGEABLE COMPUTER GENERATED ICONS
(4. 変化するコンピュータ生成アイコン)

“Computer generated icons including images that change in appearance during viewing may be the subject of a design claim.
Such a claim may be shown in two or more views. The images are understood as viewed sequentially, no ornamental aspects are attributed to the process or period in which one image changes into another.
A descriptive statement must be included in the specification describing the transi-tional nature of the design and making it clear that the scope of the claim does not include anything that is not shown. Examples of such a descriptive statement are as follows:”
“The subject matter in this patent includes a process or period in which an image changes into another image. This process or period forms no part of the claimed design;” or
The appearance of the transitional image sequentially transitions between the images shown in Figs. 1-8. The process or period in which one image transitions to another image forms no part of the claimed design;” or
The appearance of the transitional image sequentially transitions between the images shown in Figs. 1-8. No ornamental aspects are associated with the process or period in which one image transitions to another image.”

「見ている際に外観が変化する画像を含むコンピュータ生成アイコンは、意匠クレームの対象となり得る。かかるクレームは、2以上の図で表すことができる。画像は連続して観察されるように把握され、いかなる装飾的側面も、一つの画像から他の画像に変化するプロセス又は時間によるものではない。
デザインが移り変わる性質を記述し、特許請求の範囲は図示されていないものは何も含んでいないことを明確にする記載を明細書に含める必要がある。かかる記述書は例えば以下の通りである。
「本特許の主題は、一つの画像が他の画像に変化する過程又は時間を含んでいる。この過程又は時間は、特許請求された意匠のいかなる部分も構成しない。」
「図1〜8に図示された画像の間を連続して変化する画像の外観。一つの画像が他の画像に変化する過程又は時間は、特許請求された意匠のいかなる部分も構成しない。」あるいは
「図1〜8に図示された画像の間を連続して移り変わる変化する画像の外観。いかなる装飾的側面も、一つの画像から他の画像に変化する過程又は時間とも関連しない。」

解説

画像が変化するコンピュータ生成アイコンも意匠の対象となります。しかし、画像が変化するプロセスや時間は、意匠の構成要素となりません。

“We do not see that the dependence of the existence of a design on something outside itself is a reason for holding it is not a design ‘for an article of manufac-ture.’ ” In re Hruby, 373 F.2d 997, 1001, 153 USPQ 61, 66(CCPA 1967)(design of water fountain patentable design for an article of manufacture).
“The dependence of a computer-generated icon on a central processing unit and computer program for its existence itself is not a reason for holding that the design is not for an article of manufacture”.

「我々は、デザインの存在がその外部にある何かに従属していることは、当該デザインが「製品の物品」にかかる意匠ではないと判示する根拠とは考えていない(In re Hruby, 373 F.2d 997, 1001, 153 USPQ 61, 66(CCPA 1967)。(水溜のデザインは、製品の物品にかかる特許可能なデザインである)。
「コンピュータ生成アイコンのCPU及びその存在のためのコンピュータプログラムに対する従属性はそれ自体、デザインが製品の物品に係るものではない、と判示する根拠とはならない。」

MPEPの同規定には、審査官がコンピュータ生成アイコンの審査をどのような手順で行うかが規定されています。その中の一つのステップとして以下のような規定があります。

“(2)Review the title to determine whether it clearly describes the claimed subject matter. 37 CFR 1.153
The following titles do not adequately describe a design for an article of manufacture under 35 USC 171:”computer icon”; or “icon.” On the other hand, the following titles do adequately describe a design for an article of manufacture under 35 USC 171:”computer screen with an icon”; “display panel with a computer icon”; “portion of a computer screen with an icon image”; “portion of a display panel with a computer icon image”; or “portion of a monitor displayed with a computer icon image.”

(2)名称が特許請求された主題を明確に記述しているかを判断するために、名称を検討する。
「以下の名称は、米国特許法171条による製品の物品にかかるデザインを適切に記述していない。「コンピュータアイコン」又は「アイコン」。
他方、以下の名称は、米国特許法171条による製品の物品にかかるデザインを適切に記述している。
「アイコンを備えたコンピュータスクリーン」「コンピュータアイコンを備えたディスプレイパネル」「アイコン画像を備えたコンピュータスクリーンの部分」「コンピュータアイコン画像を備えたディスプレイパネルの部分」「コンピュータアイコン画像を備えた表示されたモニタの部分」

解説

単に「アイコン」というのみでは内容を正確に表しておらず、「アイコンを備えたスクリーン、パネル」など、スクリーンやパネルと組み合わせた表現とすることにより初めて認められます。
アイコンはスクリーンやパネル、モニタに具体化されている必要があります。

コンピュータ生成アイコンとはどのようなものでしょうか。この実際の意匠特許を見てみましょう。D626143号です。

“CLAIM
The ornamental design for a computer-generated icon for a blood glucose display, as shown and described”.

「請求項
図示され、かつ記載された血糖表示のためのコンピュータ生成アイコンにかかる装飾的デザイン。」

“FIG. 1 is a front view of a computer-generated icon for a blood glucose display in accordance with the present invention;
FIG. 2 is a front view of a second embodiment thereof;
FIG. 3 is a front view of a third embodiment thereof;
FIG. 4 is a front view of a fourth embodiment thereof; and,
FIG. 5 is a front view of a fifth embodiment thereof”.

「図1は、本発明にかかる血糖表示のためのコンピュータ生成アイコンの正面図である。
図2は、上記の第2実施形態の正面図である。
図3は、上記の第3実施形態の正面図である。
図4は、上記の第4実施形態の正面図である。
図5は、上記の第5実施形態の正面図である。」

別のコンピュータ生成アイコンを見てみましょう。D473237号です。

FIG. 1 is a front view of a surface ornamentation for a handheld computer and a computer-generated icon for a handheld computer of the invention, on a greatly enlarged scale, the surface ornamentation or icon is shown separately for clarity of illustration;

図1は、大きく拡大したスケールの本発明のハンドヘルドコンピュータ用の表面装飾、及びハンドヘルドコンピュータ用のコンピュータ生成アイコンの正面図であり、表面装飾又はアイコンは例示目的で分離して図示されている。

MPEP1504.01
III.TREATMENT OF TYPE FONTS(タイプフォントの取扱)

“Traditionally, type fonts have been generated by solid blocks from which each letter or symbol was produced. Consequently, the USPTO has historically granted design patents drawn to type fonts. USPTO personnel should not reject claims for type fonts under 35 U.S.C. 171 for failure to comply with the “article of manufacture” requirement on the basis that more modern methods of typesetting, including computer-generation, do not require solid printing blocks”.

「タイプフォントは従来、各文字又は記号が生じるソリッド太字により構成されてきた。その結果、USPTOは、タイプフォントに表された意匠特許を認めてきた。USPTOの審査官は、コンピュータ生成によるものを含むタイプセットの現在の方法は堅固な印刷用ブロックを必要としないことを根拠に、「製品の物品」の要件には適合していないため、米国特許法171条によりタイプフォントに対する特許請求を拒絶すべきではない。」

解説

タイプフェイス(書体)は、我が国では意匠登録の対象とはなりません。意匠は物品に施されたデザインであり、タイプフェイスには物品がないからです。

実際にタイプフォントの米国意匠特許を見てみましょう。アラビア数字のタイプフォントの意匠特許(D607492号)です。

FIG. 1 is a face view of an arabic numeral type font showing my new design; and,
FIGS. 2-11 are respective individual face views of the characters of the arabic numeral type font of FIG. 1

「図1は、私の新規なデザインを示すアラビア数字タイプフォントの正面図である。
図2〜11は、図1のアラビア数字タイプフォントの文字の各々の正面図である。」

解説

数字の一つ一つに複数のドットが入っており、これが新規なデザインということになります。

MPEP1504.01(b)

Design Comprising Multiple Articles or Multiple Parts Embodied in a Single Article [R-5]
“While the claimed design must be embodied in an article of manufacture as required by 35 U.S.C. 171, it may encompass multiple articles or multiple parts within that article. Ex parte Gibson, 20 USPQ 249(Bd. App. 1933). When the design involves multiple articles, the title must identify a single entity of manufacture made up by the parts(e.g., set, pair, combination, unit, assembly). A descriptive statement should be included in the specification making it clear that the claim is directed to the collective appearance of the articles shown. If the separate parts are shown in a single view, the parts must be shown embraced by a bracket ” } “. The claim may also involve multiple parts of a single article, where the article is shown in broken lines and various parts are shown in solid lines. In this case, no bracket is needed. See MPEP § 1503.01“.

「MPEP1504.01(b)複数の物品を含む意匠、あるいは単一の物品に具体化された複数の部分を含む意匠
米国特許法171により要求されるように、特許請求された意匠は製品の物品に具体化される必要がある一方で、意匠は複数の物品又は当該物品の中の複数の部分を含んでいてもよい。Ex parte Gibson, 20 USPQ 249(Bd. App. 1933)。意匠が複数の物品を含む場合、名称は、複数の部分より構成される製品の単体を示している必要がある(例えば、セット(組)、対、組合せ、ユニット、組立体)。クレームが図示された物品の集合的外観を対象としていることを明確にする記載を明細書に含んでいる必要がある。個々の部分が一つの図面で表されている場合は、それらの部分は括弧 } で括られて図示される必要がある。クレームは単一の物品の複数の部分を含んでいてもよいが、ここでは当該物品は波線で表され、様々な部分は実線で表される。この場合、括弧は必要ない。MPEP1503.01参照。」

解説

ここでは我が国の「組物の意匠」(意匠法8条)や部分意匠(意匠法2条1項)を思い浮かべて見ましょう。一定の構成物品(例えば、一組のナイフ、フォーク、スプーンセット、一組の薬味入れセットなど)に該当し組物全体として統一性があれば(まとまった形状、模様が施されているなど)、複数の物品から構成されていても組物として一つの出願とすることができます(意匠審査基準72.1.1.3)。
米国の意匠特許では複数の物品や一つの物品の複数の部分であっても一つの意匠で出願できることが規定されています。それがセット、ペアの物品などです。
ここでセットものの物品で特許された例をみてみましょう。D640896号「調理器具の積み重ねセット」です。Fig. 6に {が付けられています。これは上記MPEPでも説明されている「複数の物品を一つの図面で表す」場合だからです。

これまで意匠特許の明細書、クレームを見てきましたが、非常に簡潔なものばかりでした。最後に意匠特許の明細書、クレームの記載について規定した規則を確認してみましょう。

37 CFR 1.153 Title, description and claim, oath or declaration.
(名称、明細書、クレーム、宣誓書、宣言)

(a)The title of the design must designate the particular article. No description, other than a reference to the drawing, is ordinarily required. The claim shall be in formal terms to the ornamental design for the article(specifying name)as shown, or as shown and described. More than one claim is neither required nor permitted.

「意匠の名称は、特定の物品を指定する必要がある。図面に対する参照以外のいかなる記述も必要とされない。特許請求は図示され、あるいは図示され、かつ記述された(名称を特定した)物品にかかる装飾的デザインに対し、形式的な文言でなされるものとする。1つ以上のクレームは必要ないし、認められない。」

解説

このように、明細書には図面の参照以外の必要ないと規定されており、それゆえに意匠特許の明細書は簡潔なものばかりでした。クレームの一つ以上は認められず、この点は植物特許と同様です。

今週のポイント

  • 画像が変化するコンピュータ生成アイコンも意匠の対象となります。しかし、画像が変化するプロセスや時間は、意匠の対象とはならない。
  • 複数の物品や一つの物品(セット、ペアの物品)の複数の部分であっても一つの意匠で出願できることが規定されている。
  • タイプフォントは、米国特許法171条に規定する「製品の物品」に該当するか否かが問題となるが、原則として意匠の対象となるとされている。
  • 意匠特許の明細書は図面に対する参照以外は必要とされない。
  • 意匠特許も1つ以上のクレームは認められない。

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