第7回 意匠特許についての解説

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今回は、意匠特許を説明しています。実用特許、植物特許と共に米国特許の大きな要素となっています。物品の装飾的外観を保護する意匠は、わが国では特許とは全く異なる制度であり、意匠法という法律が特許法とは別に設けられています。これに対し米国では”Design Patent”(意匠特許)という文言からもわかるように、意匠は特許の一類型とされています。
(参考資料:米国特許公報562467号591456号から掲載)

意匠特許のNumber Search

先ず、意匠特許の検索は、US PTOのWebサイトでNumber Searchを行う場合には、”Full Text and Image Database”に”Query”に例えば、”D591456″と入力します(plant patent(植物特許)の場合は、”PP”の記号を付しましたが、design patentは”D”の記号を付します。

US Patent Full-Text Database Number Search

意匠特許出願の料金

US PTOのWebサイトのFee Scheduleを見てみましょう。

  1. Basic filing fee(出願基本料金)
    US$ 220(110)*2004年12月8日以降の出願
  2. Design Search fee(意匠調査料金)
    US$ 100(50)
  3. Design Examination fees(意匠審査料金)
    US$140(70)
  4. Design Issue fee(意匠発行料金)
    US$ 860(430)

(括弧内は”small entity”(小規模団体)による出願の場合)

意匠特許の実例

意匠特許の明細書は短く理解するのが容易です。図面の説明が記載され、図面が添付されています。例えば上記で検索したD591456号の明細書を見てみましょう。

Claim(請求項)

“The ornamental design for a motorcycle helmet, as shown and described”.

「図示され、かつ記載されたオートバイのヘルメットにかかる装飾的デザイン。」

解説

このように意匠特許のクレームは殆ど、その名称のみ記載されています。
“as shown and described”は意匠特許のクレームでよく用いられる表現です。

Description(記載)

“FIG. 1 is a rear view of a motorcycle helmet showing my new design;
FIG. 2 is a bottom view thereof, the details shown in broken lines form no part of the claimed design;
FIG. 3 is a front and left side perspective view thereof;
FIG. 4 is a front view thereof;
FIG. 5 is a rear and left side perspective view thereof;
FIG. 6 is a left side view thereof;
FIG. 7 is another rear and left side perspective view thereof;
FIG. 8 is a top view thereof; and,
FIG. 9 is a right side view thereof”.

「図1は、私の新規なデザインを図示したオートバイのヘルメットの背面図である。
図2は、前記の底面図であり、波線で示した細部は、特許請求されたデザインのいかなる部分も形成しない。
図3は、上記の正面及び左側面斜視図である。
図4は、上記の正面図である。
図5は、上記の背面及び左側面斜視図である。
図6は、上記の左側面図である。
図7は、上記の他の背面及び左側面斜視図である。
図8は、上記の平面図である。
図9は、上記の右側面図である。」

解説

我が国特許法では、原則として正面、背面、左・右側面、平面、底面図の6面図をワンセットで提出することになっています。ただし、等角投影図法や斜投影図法という図面の記載方法によると、必ずしも六面図を提出する必要はありません。
また我が国では、願書の「意匠の説明」という欄では、物品の材質や大きさが理解困難な場合や、物品が透明である場合にこれを説明します。「意匠に係る物品の説明」は、意匠に係る物品の記載からでは物品が把握できない場合に、使用目的、使用状態等を記載します。

次の意匠特許を見てみましょう。D562467号です。

CLAIM(クレーム)

“The ornamental design for a bonded panel having interlocking sides, as shown and described”.

「図示及び記載された連結側面を有する結合されたパネルに係る装飾的デザイン。」

Description(説明)

“FIG. 1 is a perspective view of a bonded panel having interlocking sides showing my new design; the broken line showing of a second bonded panel is for illustrative purposes only and forms no part of the claimed design
FIG. 2 is a front elevational view of FIG. 1; the rear being a mirror image thereof;
FIG. 3 is a right side elevational view of FIG. 2;
FIG. 4 is a left side elevational view of FIG. 2;
FIG. 5 is a top plan view of FIG. 2, the bottom plan view being a mirror image thereof; and,
FIG. 6 is an enlarged partial view, looking from the top of FIG. 1, illustrating the cooperation of the sides of adjacent bonded panels while they are being brought together or taken apart.
The bonded panel having interlocking sides is shown as broken in FIGS. 1 4 to indicate indeterminate length”.

「図1は、私の新規なデザインを図示した連結側面を有する結合されたパネルの斜視図である。第2の結合されたパネルに表された波線は例示の目的のみであり、特許請求された意匠のいかなる部分も構成しない。
図2は、図1の正面図であり、背面はこれと左右対称である。
図3は、図2の右側面図である。
図4は、図2の左側面図である。
図5は、図2の平面図であり、底面図は、これと左右対称である。
図6は、図1の上部から見た部分拡大図であり、隣接する結合されたパネルの側面の協働を記述し、一方でこれらは結合されたり、分解されたりする。
連結側面を有する結合されたパネルは図1〜4に波線で図示されており、確定されていない長さを示している。

解説

“a front elevational view”(正面図)、” a right(left)side elevational view”「右(左)側面図」という表現をすることがあります。また、”… is a mirror image of 〜”(…は〜と左右対称である)と表現することがあります。

意匠の関連規定

35USC 171(米国特許法171条)

“Patents for designs(意匠に関する特許)
“Whoever invents any new, original and ornamental design for an article of manufacture may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title”.

「製造物の物品にかかる何らかの新規で、独自の、かつ装飾的デザインを創作した者はいかなる者も、当該デザインにかかる特許を取得することができる。但し、本法の条件及び要件に従うことを条件とする。」

解説

デザインの特許は装飾的な外観のみにととまらず、技術的思想を対象とする発明の側面のあるため、意匠は特許の一つとして捉えられています。

37 CFR 1.151 Rules applicable(適用可能な規則)

“The rules relating to applications for patents for other inventions or discoveries are also applicable to applications for patents for designs except as otherwise provided”.

「他の発明又は発見にかかる特許出願に関する規則は、他の規定がない限り、デザインにかかる特許の出願にも適用される。」
但し、意匠特許を特許協力条約(PCT)による国際出願することはできません。この点はMPEPにも規定されています。

意匠特許の対象

MPEP1502

“In a design patent application, the subject matter which is claimed is the design embodied in or applied to an article of manufacture(or portion thereof)and not the article itself”.

「意匠特許出願においては、特許請求される主題は、製品の物品(又はその部分)に具体化された、あるいはこれに適用されたデザインであって、物品それ自体ではない。」

解説

つまり意匠特許は瓶や皿などの物品そのものではなく、物品に施されたデザインについて成立するものです。

MPEP1504.01

“A picture standing alone is not patentable under 35 U.S.C. 171. The factor which distinguishes statutory design subject matter from mere picture or ornamentation, per se(i.e., abstract design), is the embodiment of the design in an article of manufacture.”

「米国特許法171条により、単に立て掛けられている写真は特許されない。単なる写真又は装飾それ自体(つまり抽象的なデザイン)と意匠の法定主題を区別するファクターは、製品の物品において意匠が具体化されていることである。

解説

写真や絵はそれだけでは意匠とはならず、何らかの物品にプリントされたり、表されることにより初めて意匠となります。また物品の部分(ラケットのグリップ部分など)に斬新なデザインがあれば部分意匠の対象となります。

MPEP1502

“The design for an article consists of the visual characteristics embodied in or applied to an article”.

「物品にかかるデザインは、物品に具体化された、あるいは物品に適用された視覚上の特徴から成る。」

解説

我が国意匠法においても、意匠は「視覚を通じて認識されること」が要件となっています。視覚以外の五感で認識されるものは意匠の対象ではありません。

“Since a design is manifested in appearance, the subject matter of a design patent application may relate to the configuration or shape of an article, to the surface ornamentation applied to an article, or to the combination of configuration and surface ornamentation”.

「デザインが外観上に表れるため、意匠特許出願の主題は、物品の構造又は形状、物品に施される表面装飾、あるいは構造と表面装飾の組合せに関するものであってもよい。」

解説

意匠とは例えば物品の表面に施される模様です。しかし模様だけでなく、物品の構造や形状に成立することもあります。例えば特殊な形状をした物品であれば、それが意匠の対象となり得ます。
“subject matter”は実用特許でもよく使われる表現で、「(発明の)主題」、つまり発明の対象のことです。

“Design is inseparable from the article to which it is applied and cannot exist alone merely as a scheme of surface ornamentation. It must be a definite, preconceived thing, capable of reproduction and not merely the chance result of a method.

「意匠は、それが施される物品から切り離すことができず、単に表面装飾の着想として単独では存在し得ない。意匠は、明確で、予め考えられた物であり、再現可能であり、単に方法の偶然結果ではないことが必要である。」

解説

我が国でも意匠は物品と一体不可分です。つまり物品と離れて模様のみが一人歩きして単独で意匠になる、ということはなく、物品と模様がワンセットで初めて意匠が成立します。物品が異なれば、たとえ模様が同じであっても全体としては異なる意匠になります。
“preconceive”(予め考えられた)であり、”result of chance”(偶然の結果)でないことは我が国意匠法には要件として規定されていません。

実用特許と意匠特許の相違

両者の相違は以下の通りです(MPEP1502.01を参考に作成)

実用特許 意匠特許
存続期間 原則として、出願日から20年間(1995年6月8日以降に出願されたもの) 登録の日から14年間(“Patents for designs shall be granted for the term of fourteen years from the date of grant”(35 USC 173))。
*意匠特許の存続期間は再発行によっても延長できない(MPEP1509)と規定されている。再発行とは、図面を削除、追加等して訂正する手続である。
維持費用 不要
クレームの数 一つの発明に限定するか否かは審査官の裁量(MPEP803参照)。 限定は義務である(MPEP1504.05参照)。
複数の国を指定した国際出願(PCT:特許協力条約)の可否 不可
仮出願の制度の有無
継続審査請求(Request for Continued Examination:RCE)の可否
(1995年6月8日以降の出願の実用特許と植物特許に適用される)
* 審査手続きがクローズした場合に特許発行料の支払い、出願の放棄等のうち最先の日以前に請求する(CFR1.114)。
不可
継続審査出願(Continued Prosecution Application:CPA)の可否 不可
継続審査請求(RCE)が設けられたことからCPAは廃止され、実用特許と植物特許ではCPAは利用できない。
2003年7月14日以降は、先の出願が2000年5月29日以前の出願日を有する場合のみ、実用特許と植物特許に適用される。

意匠特許はRCEを利用できず、CPAを利用できる。
公開制度の有無 2000年11月29日以降の出願は出願公開される。 公開なし
パリ条約優先権の優先期間 1年 6ヶ月

意匠特許出願の登録要件

MPEP1504

“In design patent applications, ornamentality, novelty, nonobviousness enablement and definiteness are necessary prerequisites to the grant of a patent. The inventive novelty or unobviousness resides in the ornamental shape or configuration of the article in which the design is embodied or the surface ornamentation which is applied to or embodied in the design.
Novelty and nonobviousness of a design claim must generally be determined by a search in the pertinent design classes. It is also mandatory that the search be extended to the mechanical classes encompassing inventions of the same general type. Catalogs and trade journals as well as available foreign patent databases are also to be consulted”.

「意匠特許出願において、実用特許と同様に、装飾性、新規性、非自明性、実施可能要件、明確性が特許の許可の必要な要件である。意匠が具体化された物品の装飾的形状又は構造、あるいは意匠に適用され、又は具体化される表面装飾に創作の新規性又は非自明性が存在する。意匠クレームの新規性及び非自明性は一般的に、該当する意匠分類の検索により判断される必要がある。同一の一般的タイプの発明をカバーする機械的分類にまで調査を広げる必要もある。利用可能な外国の特許データベース、並びにカタログ及び業界紙も調べる必要がある。」

解説

意匠特許の新規性、非自明性は、意匠の物品の分類を中心に先行技術が調査されます。公知文献としては、外国のデータベース、カタログ等が引用されます。

コンピュータ生成アイコン

MPEP1504.01(a)

“Computer-generated icons, such as full screen displays and individual icons, are 2-dimensional images which alone are surface ornamentation. See, e.g., Ex parte Strijland, 26 USPQ2d 1259(Bd. Pat. App. & Int. 1992)(computer-generated icon alone is merely surface ornamentation). The USPTO considers designs for computer-generated icons embodied in articles of manufacture to be statutory subject matter eligible for design patent protection under 35 U.S.C. 171. Thus, if an application claims a computer-generated icon shown on a computer screen, monitor, other display panel, or a portion thereof, the claim complies with the “article of manufacture” requirement of 35 U.S.C. 171.”

「コンピュータ生成アイコン、例えばフルスクリーンディスプレイ、個々のアイコンは、単に表面装飾である2次元画像である(例えば、査定系Strijland 26 USPQ2d 1259(Bd. Pat. App. & Int. 1992)(コンピュータ生成アイコンは単に表面装飾に過ぎない)。USPTOは、製品の物品に具体化されたコンピュータ生成アイコンのデザインを米国特許法171条による意匠特許保護に値する法定主題とみなしている。よって出願がコンピュータスクリーン、モニタ、他のディスプレイパネル、その一部に表されたコンピュータ生成アイコンを特許請求する場合は、クレームは米国特許法171条の「製品の物品」の要件に適合する。)

解説

コンピュータ生成アイコンは2次元の表面装飾ですが、これが物品であるモニタ、スクリーンと組み合わされることにより、意匠の保護対象である「製品の物品」にかかるデザインに該当します。

今週のポイント

  • “subject matter”は特許で用いられる場合は、「(発明の)主題」を意味する。
  • 意匠特許と実用特許とは、クレームの数、存続期間、クレームの数、仮出願の有無、CPA(継続審査出願), RCE(継続審査請求)、出願公開の有無など様々な相違がある。
  • “a front elevational view”(正面図)、” a right(left)side elevational view”「右(左)側面図」という表現をすることがある。
  • “… is a mirror image of 〜”(…は〜と左右対称である)と表現することがある。
  • 意匠特許の登録要件は、装飾性、新規性、非自明性、実施可能要件、明確性などである。
  • コンピュータ生成アイコンは、米国特許法171条の「製品の物品にかかるデザイン」に該当するか否かが問題となるが、モニタ、スクリーンなどの物品に表されることにより該当すると考えられる。

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