第2回 「トイレ使用の予約システム」の発明

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米国の実用特許(Utility Patent)を知るために、先ず米国で話題となった興味深いアイディアの発明の特許を見てみましょう。米国特許第6329919号の”system and method for providing reservations for restroom use”(訳:トイレ使用の予約を提供するためのシステム及び方法)です。どんな発明でしょうか。
先ず、発明の概要を記載したAbstract(要約)から見てみましょう。

Abstract(要約)

“The present invention is an apparatus, system, and method for providing reservations for restroom use. In one embodiment, a passenger on an airplane may submit a reservation request to the system for restroom use. The reservation system determines when the request can be accommodated and notifies the passenger when a restroom becomes available. The system improves airline safety by minimizing the time passengers spent standing while an airplane is in flight”.

「本発明は、トイレ使用の予約を提供するための装置、システム、方法である。一つの実施形態では、飛行機の乗客は、トイレ使用のためのシステムに対する予約の要求を提出することができる。予約システムは、いつ要求が受け入れ可能であるかを判定し、トイレがいつ利用可能になるかを乗客に通知する。システムは、飛行機がフライト中に乗客が起立して過ごす時間を最小限にすることにより、飛行機の安全性を向上させる。

次に、特許出願書類で最も理解の難しいクレーム(請求の範囲)を見てみましょう。この特許のクレームはクレーム1〜64までありますが、ここではクレーム10まで掲載して訳しておきます。

Patent Claims(請求の範囲)

1. A method of providing reservations for restroom use, comprising:
receiving a reservation request from a user; and
notifying the user when the restroom is available for his or her use.

トイレ使用のための予約を提供する方法であって、
使用者からの予約の要求を受信するステップと、
使用者がトイレをいつ利用可能であるかを使用者に通知するステップとを備えたことを特徴とする、方法。

2. The method according to claim 1, further comprising assigning a reservation number in response to the request.

要求に応じて予約番号を付与するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

3. The method according to claim 2, wherein said assigning the number assigns number based on a set of priority rules.

前記番号を付与するステップは、1セットの優先ルールに基づき番号を付与することを特徴とする、請求項2に記載の方法。

4. The method according to claim 2, wherein said assigning the number assigns number on a first come, first served basis.

前記番号を付与するステップは、先着順により番号を付与することを特徴とする、請求項2に記載の方法。

5. The method according to claim 1, further comprising providing the user with an approximate waiting time.

使用者におおよその待ち時間を与えるステップを更に備えたことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

6. The method according to claim 1, further comprising determining whether the reservation is cancelled.

予約がキャンセルされるか否かを判定するステップを更に備えたことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

7. The method according to claim 1, wherein said reservations are provided on an airplane.

前記予約は飛行機内で提供されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

8. The method according to claim 1, wherein said reservations are provided on a passenger train or boat.

前記予約は、旅客列車又は客船内でも提供されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

9. The method according to claim 1, further comprising determining whether the user has entered the restroom within a predetermined time period.

前記使用者が、所定の時間内にトイレに入ったか否かを判定するステップを更に備えたことを特徴とする、請求項1に方法。

10. A method of providing reservations for restroom use, comprising:
submitting a reservation request for restroom use; and
receiving notification when the restroom becomes available for use.

トイレ使用のための予約の要求を提出するステップと、トレイがいつ使用可能となるかの通知を受信するステップとを備えたことを特徴とする、トイレ使用のための予約を提供する方法。

このおもしろいアイディアの特許の明細書を見ると同時に、米国特許明細書の構成も概観してみましょう。この明細書は、以下の項目から成り立っています。

  1. Claims(請求の範囲)
  2. Field of the Invention(発明の属する分野)
  3. Background(発明の背景)
  4. Summary(発明の概要)
  5. Brief Description of the Drawings(図面の簡単な説明)
  6. Detailed Description(詳細な説明)

明細書の項目のタイトルは様々ですが、他の明細書も大体、上記のような構成から成り立っています。明細書には実施例の記載がされるのが通常であり、上記”Detailed Description”に”Embodiment”(実施形態)という項目が置かれるものがほとんどです。
日本の明細書もほぼ、上記のような項目から成りますが、「図面の簡単な説明」が明細書の最後に置かれ、「発明の概要」は、「発明の解決しようとする課題」「課題を達成するための手段」という項目に分かれています。

この発明がなされるにあったっては、従来技術にどのような問題点があったのでしょうか。これを明確に記載することにより、この発明が解決しようとする課題がはっきりとわかってきます。そしてその課題を解決するための手段の項目にて、請求の範囲(クレーム)に記載されている構成要件が繰り返されます。

Background(発明の背景)

“The dangers of standing on an airplane while the airplane is in flight are well known. However, because of the shortage of restrooms on board, it is often necessary for passengers to stand for quite sometime in the aisles while queuing to use the restroom. Standing in the aisle of a moving aircraft creates safety hazard and inconveniences for both the passenger and other people on board. For example, a standing passenger may fall and injure himself or other passengers when the airplane encounters turbulence in the air. Likewise, a passenger may lose a great deal of his valuable time or miss a significant portion of an entertainment program because of waiting to use a restroom. Similar safety concerns also exist with restroom uses on a passenger train or boat”.

「飛行機がフライト中に飛行機内で起立していることの危険はよく知られている。しかし、機内に設置されたトイレの不足により、トイレを使用するために列をつくる間、乗客は、相当時間、通路に起立している必要があることも頻繁である。飛行中の飛行機の通路に起立することは、搭乗中の乗客及び機内の他者の双方に安全上の問題及び不都合を生じさせる。例えば、飛行中に乱気流に遭遇した場合、起立している乗客が転倒したり、怪我をしたり、他の乗客を怪我させることもある。その上、乗客は、多大な貴重な時間を失い、トイレの使用を待つがために、娯楽番組の肝心な部分を見逃すこともある。同様の安全上の懸念は、旅客列車又は客船内におけるトイレの使用にも生じ得ることである。

Detailed Description(詳細な説明)

詳細な説明の一部抜粋です。

“FIG. 1 shows one embodiment of a system. In this embodiment, the system includes a centralized controller 100 configured to receive information from a communications network 200 through its input/output(I/O)facility 175, preferably, via a network interface 180. The I/O facility is capable of both receiving and sending information. Peripheral devices 150 may be attached to the centralized controller for any number of purposes including, but not limited to:printers for output, scanners for input, additional or alternative storage devices for data storage and retrieval, network interfaces for communication, and devices of the like. Also, the central controller may receive information from one or more users from user input device(s)120”.

「図1は、システムの一つの実施形態を示している。本実施形態では、システムは、入力/出力装置175を介して、好ましくは、ネットワークインターフェース180を介して、通信ネットワーク200から情報を受信するように構成されている。入力/出力装置は、情報を受信及び送信することができる。周辺機器150は、中央制御装置に取り付けられていてもよく、その目的は、出力用プリンタ、入力用スキャナ、データ格納及び検索用の付加的又は他の格納装置、通信用ネットワークインターフェース及び同様の装置を含むが、これに限定されないいかなる数のものであってもよい。更に、中央制御装置は、ユーザ入力装置120から、1人以上のユーザからの情報を受信することができる。」

この実施例の最初の部分をみてもわかるように、これはコンピュータを使用した通常の特許です。このような発明は通信関係の発明で頻繁に見る明細書の内容です。「トイレ使用の予約を提供するための装置、システム及び方法」という発明の名称が目を引き、特別なアイディアに特許が付与された印象を受けますが、通信関係の通常の発明です。

ではここで、米国ではどのようなものが特許を取得できる発明の対象となるのでしょうか。条文を確認してみましょう。35USC101条に発明の対象が規定されています。

35 U.S.C. 101 Inventions patentable.

“Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title”.

「新規かつ有用なプロセス(工程)、機械、製造物又は合成物(組成物)、あるいはこれらの新規かつ有用な改良を発明又は発見したいかなる者も、本法の条件及び要件に従うことを条件として、これらについての特許を取得することができる。」

つまり特許の対象となるのは、プロセス、機械、製造物、合成物あるいはそれらの改良ですが、新規かつ有用であることが必要です。これについては、新規性(novelty)、有用性(utility)などの特許要件が定められています。プロセスは「方法」のことです。
ここで挙げた「トイレ使用の予約システム」「トイレ使用の予約方法」は、機械や工程に当たると考えることができます。

では更に別の興味深いアイディアの特許を見てみましょう。

今週のポイント

  • 米国特許明細書は、Field of the Invention(発明の属する分野)、Background(発明の背景)、Summary(発明の概要)、Brief Description of the Drawings(図面の簡単な説明)、Embodiment(実施態様)などの項目から成ります。
  • 35USC101条に発明の対象が規定されています。
  • 特許の対象となるのは、プロセス、機械、製造物、合成物あるいはそれらの改良ですが、新規かつ有用であることが必要です。

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