第85回 北韓離脫住民と韓国語(1)

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朝鮮半島が分断され60年以上の歳月が流れました。分断の中,韓国に行けば,きっと大きな夢をつかめるだろう,きっと幸せに暮らせるだろうという‘아메리칸드림’ならぬ ‘남한드림’を頭に描いて北朝鮮から韓国に逃れてきた,いわゆる脱北者(いまでは,脱北者立ちに配慮して북한이탈주민〈北韓離脫住民〉と言う)たちの韓国生活が思いのほか大変なようです。

今までとは全く違った体制の国にやってきた北朝鮮からの脱北者たちは,政治体制の違いからくる生活環境だけでなく,同じ民族であると思っていた韓国人の意識構造の異質化現象に対しても心理的に違和感を感じていると言います。

そして脱北者たちにとっては,これに加え,民族精神の土台になる言葉までも異質なものに感じられ,さらにストレスを助長しています。南と北は,おのおの独自にそれぞれの体制や社会の雰囲気に合う方向で語彙を作り出したり使用したりしてきたために,用語の概念や表現方式が大きく変わってしまい,脱北者にとっては,この語彙の違いが,韓国での生活の重荷を背負わされているように感じるのです。

韓国でも地域ごとに方言があり,それぞれ特徴のある発音やイントネーションがあるのに,互の意思疎通には無理がありません。ではなぜ脱北者が韓国人とうまく意思疎通ができないのでしょうか。単に「北の訛り」のせいだけではないように思えます。

まず,「生活語彙」の違いについてみてみましょう。われわれのようにカタカナ語の生活に慣れてしまっている人には気がつかないかも知れませんが,いきなり保守的な世界から自由の世界に放り出された人はそれこそ大変です。

“오늘 스케줄이 어떻게 돼요?”と聞かれてもちんぷんかんぷんです。“스타얼라이언스 항공사 탑승 시에도 아시아나클럽 마일리지를 적립하실 수 있습니다.”といわれても,外来語が混じった表現は,脱北者にとっては朝鮮語であって朝鮮語ではない感じがするのでしょう。日本語でも「ツイッターが,ユーザーの全ツイートをアーカイブとしてダウンロード出来る機能を追加したと発表しました」のような外来語混じりの文章を聞いても,ちんぷんかんぷんの人は多いと思います。

LG마트,KB은행などの町中にどこにでもあるアルファベット商号名,포스트잇,퀵서비스,햄버거など北朝鮮では見ることもなかった品物や概念を示す語彙…。韓国で新たな第一歩を踏み出そうとしている脱北者たちにはまるで外国へ来ているような戸惑いをおぼえるといいます。南北が長年の歳月,お互いに違う制度の下で別々に国造りをしてきた結果,日常で書く語彙が大きく変わってしまったのです。そして,その結果,定着初期の脱北者たちは,生活全般にわたって不便さと苦情を訴えているのですが,途絶された両地域の人たちの心が,一朝一夕に一つになるのは難しいのは目に見えていることです。

音韻体系の差が意思疎通を阻害していることも否めません。北朝鮮の人たちが発音する母音の[으]は,南の人には[우]のように聞こえます。また北朝鮮の人たちが発音する[오]と[어]はなかなか区別が付きにくいのです。大多数の脱北者たちは地域方言である함경(咸鏡)方言,동북, 육진(六鎭)方言を使っているために,独特の声調やイントネーションがあるので,ソウルの人たちとの会話は容易ではありません。それに加えて,特にお互いに共有する脈絡がない人名, 地名やいろいろな機関などの固有名詞についても言及しなければならない状況では,内容伝達に支障がないわけがありません。

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