第63回 しおれていく言葉たち

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みなさんは,정치적 올바름という見慣れない言葉を知っていますか。political correctnessの韓国語訳で,日本語では,そのままポリティカル・コレクトネス(略称:PC)と言っています。これは1980年代ごろからアメリカで使われ始めた言葉で,政治的(Political)な観点から見て正しい(Correct)用語を使うことにより「差別や偏見に基づいた表現や認識」を改めようというものです。

言い換えれば,정치적 올바름は,主に職業・性別・文化・人種・民族・宗教・ハンディキャップ・年齢・婚姻状況などによる社会的な差別・偏見を助長するような表現を排除し,公平な表現のもとに社会的弱者の人権を擁護しようとするものです。

アメリカでは,chairman(議長)をchairpersonに,policeman(警察官)をpolice officerに,fireman(消防士)をfire fighterにしたり,少数民族のアメリカ・インディアンをAmerican IndiansからNative Americanに言い換えたり,民族差別をなくすために,黒人をBlackからAfrican-American(アフリカ系アメリカ人)に言い換えたという具体例があります。

とくに北米などでは,多様な宗教に配慮した表現も考え出されています。クリスマスはキリスト教の行事であるため,公的な場所や機関などではMarry Christmasとは言わず,Happy Holidaysと言い換えたり,クリスマスカードをSeason’s Greetingという文字に書き換えたりしています。

そして,この運動は,英語だけではなく日本語や韓国語など他の言語にも持ち込まれ,いくつかの用語が修正されるに至っています。その一例を挙げてみましょう。

2001年に韓国の国家人権委員会は,살색(はだ色)は人種差別用語だと言う一市民からの訴えで,色の名前を変えることを勧告したといいます。そして翌年に살구색(あんず色)という名称に変えました。だいたい時を同じくして,日本でもペールオレンジとか,うすだいだいという名称に変わりました。

1990年代から2000年代にかけて,韓国人の父親と東南アジア出身の母親から生まれて来た子どもを코시안(Kosian=Korean+Asian)という造語で呼んでいましたが,この言葉も差別用語だとしていつの間にか消えてしまいました。

同じように問題になっているのは조선족〈朝鮮族〉という言葉です。韓国の経済的な発展とともに,いままで韓国人がやっていた「きつい」「汚い」「危険」な3K職場(韓国語ではdifficult,dirty,dangerousの頭文字を取って3D[삼디]직장)に,韓国語が通じるために,中国の朝鮮族の人たちが入って来るようになったのですが,この조선족という言葉には,そういった人たちを差別する響きがあるというのです。しかし,一般社会では중국 동포〈中國同胞〉,재중 동포〈在中同胞〉への言い換えはあまり進んでいないようです。

日本でも有名なものとしては「トルコ風呂」が「ソープランド」に改名したことです。男性の看護士が増えるとともに看護婦,看護士は看護師になりました。韓国語でも간호부〈看護婦〉が간호원〈看護員〉に変わった後,간호사〈看護師〉になりました。またスチュワーデス,スチュワードがキャビンアテンダントや客室乗務員に変わりましたが,韓国語でも스튜어디스,스튜어드が플라이트 어텐던트に変わりました。

しかし,この정치적 올바름(政治的妥当性)を要求する姿勢が行きすぎると,いろいろな問題が起こります。「女医(여의사)」も「女子社員(여직원)」も性差別につながるというのでだめだといわれると,いままでピチピチと生き生きしていた言葉が,だんだんしおれて死んでいきます。

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