第171回 カタコトかペラペラか

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あるところの授業で、方向補語の説明をしていた時、ある生徒さんから質問されました。

「何のためにそんな文法があるんですか?」

いや、何のためって言われてもねぇ(苦笑)。

その生徒さんの言いたいことは、例えば、「どうぞお入りください」という言い方は

请进!
qĭng jìn

と言えばいいわけで、この場合意味的には話者は部屋の中にいるから、もし方向補語をつけるなら「请进来(入ってきてください)」と言わなければならないはずなのに(実際こう言う場合もあるでしょうが)、「请进」という言い方もあるのは、なぜ?「来」はあってもなくてもいいというなら、こんなもの習わなくてもいいではないですか。と、こういうお考えのようでした。

まぁ、確かに、どうでもいいものなら、少しでも「覚える」労力は少ないほうがいいです。気持ちは分かるのですが、、、でもよく使う文法なので覚えていただかないわけにはいかないのですよねぇ。つらいところです。

「把」字句について説明していた時も、同じ生徒さんが質問してきました。

「中国語はSVOという語順だというのに、わざわざO(目的語)を前に出さなくてもよくありませんか?SVOの語順で言えばいいじゃないですか。」

ま、おっしゃるとおりなのですが、「把」の文が厳然として存在する以上、覚えていただかないわけにはいかないのですよねぇ。

結局、この生徒さんは、できればややこしい文法は覚えたくない、ということなのかな?と思いました。以前この生徒さんは「NHKで卓球少女愛ちゃんがやっている『とっさの中国語』みたいな授業のほうが役に立つと思うのですが、そういう授業にしてくれませんか」と言ってきたことがあります。「とっさの中国語」は、確かに便利で役に立つと思いますが、そういうフレーズばっかり覚えていても、応用力はつかないし、ちゃんとしゃべれるようにはなりません。そのように説明して一応納得いただいたのですが、多分ご本人の理想とする語学の授業と伊藤の授業はかけ離れていたのでしょう。その不満が「方向補語」等の文法説明の時に爆発したようです。

この生徒さんは、覚える前に「この文法は必要かどうか」を考えてしまうようですが、語学の勉強というのは、あまり色々考えないほうがいい場合が多いと僕は思っています。

一般に女性は語学に強いと言われますが、それは、多くの女性はあまりアレコレ考えずに「ああ、こういう文法があるのね」と思って、そのまま丸呑みしてしまえるからのようです。男性は、これができない人が多い。なんか色々ゴチャゴチャと考えてしまうのですよね。

モノゴトに疑問を感じる感性はとても大事なことですが、語学の勉強に関しては、あまり深く考えないで丸呑みしていく姿勢も必要です(もちろん、疑問は疑問として残しておいてくださいね。いつか解決するかもしれませんから)。

この生徒さんは、丸呑みできない人の典型と言えそうです。この文法は絶対必要だ、と思えなければ覚える気がしないのでしょう。まどろっこしくなっても別の簡単な言い方で言えるなら、難しい文法は避けて通りたいという気持ち、分からないではありません。

この生徒さんの考え方に沿って授業をすると、最低限の文法(語順はSVOである、形容詞述語文はbe動詞は要らない、等々)だけ説明して、あとは使いそうなフレーズだけひたすら覚えていくということになるのでしょうが、、、

もし生徒さんがそれを望むのであれば、それでいいと思っています。どうしても僕たち教師は、自分の考えを押し付けてしまいがちですが、生徒さんがどういう目的をもって授業に出ているのか、「ペラペラになりたい」のか「カタコトでいい」のか、「発音も完璧になりたい」のか「発音は通じる程度でいい」のか、生徒さんのニーズに合わせて授業を行うのが理想ですよね。

しかし、カタコトというレベルに達するだけでも、実はちゃんと勉強しないとダメなのです。僕の教えた生徒さんの1人を紹介しますと、彼は色々な文法や語彙をドンドン丸呑みしていきました。実は心の中は結構疑問だらけだったようで、授業でもよく質問しておられましたが、納得できてもできなくても、とりあえず飲み込んでいくのですね。

1年半たった頃、仕事で中国に行って、レストランを予約したり、メンバーの忘れ物を探すため電話したり、そういうことを全て1人で中国語でやってのけたのです。ご本人曰く、なんと言っていいかわからなかったのでシドロモドロだったけど、とにかく結果が出せたのはよかった、と。

要するに、彼の話す中国語は、多分語順も発音も結構カタコトだっただろうと思いますが、レストランの予約ができていて、忘れ物も見つかったということは、ちゃんと中国語で用事をこなせたということです。

カタコトでも用事がこなせたのは、やはり彼がたくさんの中国語の文法や表現や語彙を仕入れていたからだろうと思います。必要な、使いそうな言葉だけを覚えていても、さてそれが効率よく全て発揮できるかというと、そうそう簡単なものではありません。豊富な語彙や知識があったからこそ、たとえカタコトであっても、ちゃんと結果を出せたのです。

「別にカタコトでいいや」と思っている人も、できれば教室では「ペラペラになる」つもりで頑張っていただきたいと思います。

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