第159回 耳は万能じゃない

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前回のメルマガで「yuan」の発音について少し言及したところ、ある人から感想をいただきました。曰く:

「自分の名前には『原yuán』という字が入っているが、自分の耳には『ユエン』と聞こえるし、『再见zài jiàn』も『ザイジエン』と聞こえる。『a』と書いてあっても「ア」と読まないで「エ」と読む時があることを中国語ネイティブの人に質問しても、質問の意図がさっぱり分かってもらえないことが多い。」

なるほど、これは面白い現象です。

日本の人って、言葉はネイティブに習うのが一番!と思っている人が非常に多いのですが、そうとも言い切れません。というのは、自分の母語って自分にとっては当たり前すぎて、改めて色々質問されても説明しきれないことが多いのです。皆さんも、日本語のことを説明しろと言われても急にはできないですよね?日本語の「エ」という発音はどうやって発音するのですか?と尋ねられて的確に答えられる日本人は一握りだと思います。

「yuan」については、(日本人の耳で聞いたときに)「ユエン」と聞こえる場合と「ユアン」と聞こえる場合があるのですが、おそらく中国人の耳には同じ音に聞こえているはずです。だから、「原」という字は「ユエン」ですか?「ユアン」ですか?と尋ねられても中国人には「あんた何言ってるの?」ということになるのでしょう。

同じようなことが日本語を勉強中の中国人にも起こります。

以前にも書いたことがあるかと思いますが、ある中国人留学生が日本語教師(日本人)にこんな質問をしてきたそうです。

「先生!『パンダ』の『パ』は、『パ』ですか?『パ』ですか?」

その日本人の先生は、その生徒さんが何を質問しているのかさっぱり分からなかったそうです。ただ、そういう中国人が多いらしいので、どうやら中国語には二種類の「パ」があるらしい、とは分かったそうですが、どう指導していいか分からないようです。

これは、僕たちのように中国語を勉強している日本人にはピンと来ますね。有気音か無気音かを尋ねているのでしょう。つまり先ほどの質問、中国人留学生はこんなふうに言っていたのだと思います:

「先生!『パンダ』の『パ』は、『pa(有気音)』ですか?『ba(無気音)』ですか?」

中国語の無気音は、濁音だと思っている人も結構いますが、基本的には清音です。濁りません。濁音のように聞こえることはありますが、基本的には清音です。例えば

bà ba(「爸爸」お父さん)

という単語は、「バーバ」ではなく、かなりはっきり「パーパ」と言っているように聞こえるでしょう?無気音は基本的には濁らないのです。

ですから、その中国人留学生は「パンダ」という単語を習った時に、この「パ」は「pa」なのか「ba」なのか、どちらで発音すればいいのだろう!と思ったのでしょうね。

でも、我々日本人は、有気音だろうが無気音だろうが、「パ」は「パ」です。

本当は、「パンダ」の「パ」と「カッパ」の「パ」は、物理的には違う音が鳴っているというのを皆さんは気づいているでしょうか。

「パンダ」の「パ」は実は中国語の有気音paに近い音が鳴っているのですが「カッパ」の「パ」は、中国語の無気音baに近い音が鳴っているのです。

でも我々日本人にとって「パ」は「パ」でしかなく、「パンダ」の「パ」であろうが「カッパ」の「パ」であろうが、違う音とは思っていません。でもおそらく中国人には違う音に聞こえているはずです。

逆に、中国語の「yuan」が我々日本人の耳に「ユエン」と聞こえたり「ユアン」と聞こえたりするのは、我々が日本語の耳しか持っていないからです。中国人にとっては同じ音でしかないわけです。

耳に聞こえている音が物理的には違う音だとしても、それを処理する耳の機能(というか音を処理する脳みその部分、いわゆる言語中枢)によって、同じ音に聞いてしまったりします。その人の母語で区別しない音については、細かく聞き分けられなくなるのです。

だから、中国人は「パンダ」の「パ」が「有気音のpa」なのか「無気音のba」なのか気になるのに日本人は「有気音」と「無気音」を区別しないから中国人が何を悩んでいるか分からないわけです。

反対に、日本人は「yuan」を「ユエン」と読む中国人と「ユアン」と読む中国人がいる!と感じるのに、中国人にはどちらも同じ音に聞こえているので日本人が何を騒いでいるのか分からないわけです。

なんだかややこしい議論になりましたが、お分かりいただけましたか?

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