第153回 発想が違うのか?

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伊藤は髭を生やしています。口の周りをま~るく囲んでいる髭で、短くトリミングしていますので、まるで昔の泥棒髭ですね(笑)。だから親の世代からの評判はすこぶる悪いです。

でも今はきれいに(?)手入れしているからまだいいですが、20数年前に北京留学していたころ生やしていた髭は、我ながら汚かった~(笑)。

ところで、その留学中に髭を生やし始めて以降、久しぶりに出会った日本語学科の大学生(女性)にこんなことを言われました。

「伊藤さんは、髭が出ましたね」

いやちょっとびっくり(笑)。

彼女は中国人ですが朝鮮族で、日本語とよく似た朝鮮語を母語とする人なので、日本語もとても流暢だったのですが、それだけにおかしくて、つい笑ってしまいました。

何がおかしいって、やはり「髭」は「出る」とはあまり言いませんよね。「髭」は「生やす(生える)」ものであり「蓄える」ものであり「伸ばす(伸びる)」ものではありますが「髭が出る」「髭を出す」とは言いません。

でも論理的に考えると、髭は体内から出てくるのですから、「髭が出る」と言って間違っているわけではありません。ただ、日本語では「髭」という名詞と「出る」という動詞を組み合わせて使うことが無いだけです。

言語にはそれぞれ決まりごとがあって、論理的には「髭が出る」と言ってもいいはずなのに、ふつうはそう言わない、ということが多々あります。

当然ながら、中国語にもそういうのがあるわけですよね。たとえば:

待て

「ちょっと待って」とお願いする時は、中国語でどういいますかね。「等等děng deng」とか「等一下děng yí xià」とか、ま、色々ありますが、いずれも日本語の発想とそう違わないので間違える心配はありませんね。

では、たとえば警察が泥棒を追いかけているような状況で「待て~!」と言う場合はどうでしょう。

こういう場合に「等等!」と言っても、あまり迫力が無いというか(笑)、ちょっと効果がなさそうですよね。ふつうはこう言うと思います。

别跑!bié păo

直訳すると「逃げるな!」ということでしょうか。考えてみれば日本語でも「逃げるな!」と叫んでもいいのに、ふつうは日本語では「まて~!」が圧倒的に多いでしょうね。こういう発想の違いって面白いです。

日本語の「する」という動詞はとても便利で、いろんなことに使えますね。たとえば「料理をする」「宿題をする」「野球をする」など。

中国語で「する」にあたる単語は、「做zuò」がよく引き合いに出されると思いますが、上で書いた日本語の用例をすべて「做」で訳せるかというと、そうでもありませんね。

  • 料理をする
    做 菜zuò cài
  • 宿題をする
    写 作业 xiě zuò yè(做作业とも)
  • 野球をする
    打 棒球 dă bàng qiú

「料理」と「宿題」は中国語でも「做」という動詞が使えるようですが、「野球をする」を「做棒球」とは言えなさそうですよね。ま、通じないことはないと思いますが、言い直されること請け合いですね(笑)。

これを見て「日本語っていい加減だな。中国語は動詞を色々使い分けていてすごいな。」と思ってしまうのは早計です。たとえば「打dă」という動詞はいろんなことに使われます。

  • 打 网球 dă wăng qiú
    テニスをする
  • 打 太极拳 dă tài jí quán
    太極拳をする
  • 打 麻将dă má jiàng
    マージャンをする
  • 打 水 dă shuĭ
    水を汲む
  • 打 气 dă qì
    (タイヤや風船などに)空気を入れる

テニスなら「打」というのは納得できますが、太極拳やマージャンも「打」なのですね。さらに「水を汲む」や「空気を入れる」に至っては、日本語の発想にはないと思います。

「打dă」という動詞は、「打つ」という意味であることを忘れたほうがいいのでしょうが、どうしても漢字を見ると「打つ」という意味を思い出してしまいます。どうも漢字って厄介ですね(笑)。便利な時も多々あるのですが。

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