第150回 固有名詞なのに

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最近このメルマガを読み始めてくださった皆さんはご存知ないでしょうが、伊藤が中国語を始めたきっかけは、三国志です。

高校生の時に吉川英治の『三国志』という小説を読んではまったのです。あの時この小説を読んでいなければ、僕は今ごろ、もしかしたら英語通訳をしていたかも(笑)。

ところでこの『三国志』、日本ではゲームもありますし、非常に有名ですよね。だから中国語を習い始めて中国人と話をする機会があった時も、当然のように三国志の話をしたいと思って、

我很喜欢三国志。
wŏ hěn xĭ huan sān guó zhì
わたしは三国志がとても好きです。

と言ったら、訂正されました。

「中国では、『三国志』とは言いません。『三国演义sān guó yăn yì』と言います」

そうなんですよね。中国で『三国志sān guó zhì』と言えば、歴史書の『三国志』のことなのです。我々が思っている小説のようなワクワクドキドキしたタッチで書かれているのは、『三国演义sān guó yăn yì』と言うのです。

僕がその時話していた中国人は、日本人が言う『三国志』は『三国演义』のことだと知っていたからよかったですが、そんなことを知らない中国人だったら「伊藤君は歴史が好きなんだね~」なんて思ったかもしれません(笑)。

というわけで、日本と中国は同じように「漢字を使う国」ではあるのですが、固有名詞さえチラチラ違いがありますね。他にどんな違いがあるかちょっとご紹介します。

中国の非常に古い時代の王朝名で、「殷」というのがありますね。皆さんも中学の歴史の時間に習ったことがあるのではないでしょうか。僕の世代では、殷がもっとも古い王朝と習いましたが、最近はもしかして、その前の「夏」という王朝から習うのでしょうか?

さてこの「殷yīn」、実は中国ではあまり言われないようです。「殷」という王朝名は、その次の「周zhōu」王朝がこの国を呼ぶ時に使っていた呼称だそうで、「殷」という国自身は自分たちのことを「殷」ではなく「商shāng」と呼んでいた可能性が高いとか。

というわけで、現代中国では、我々日本人が「殷」と呼んでいるこの王朝のことを「商shāng」と呼んでいるそうです。だったら日本でも「商」と呼べばいいのにって思いますね~。だって「殷」より「商」のほうが、歴史のテストの時に覚えやすくて書きやすいじゃないですか(笑)。でもこういうのは、色々事情があるのでしょうね。

始皇帝

歴史ついでに、もうちょっと下って、秦王朝の話。秦といえば始皇帝。中国史上初めて「皇帝」という称号を作って名乗った人ですね。

日本ではふつう「秦の始皇帝」と言っていますね。とても有名ですから「始皇帝」とだけ言っても結構みんな知っていますよね。

中国でも「始皇帝shĭ huáng dì」でOKですが、僕の印象では「秦始皇qín shĭ huáng」という言い方のほうが多いように思います。字で見ればすぐ分かりますけど、音で聞けば反応しにくいので、この「秦始皇」という言い方は覚えておいたほうがいいですね~。

お釈迦様

僕はお寺の生まれなので、お釈迦様がインド(ネパール)の出身であることは、誰でも知っている常識だと思っていたのですが、一般的にはそうでもないみたいですね(笑)。

さて、インド出身のお釈迦様が、なぜ「釈迦」という漢字の名前で日本では呼ばれているのか。それは、仏教が中国経由で日本に伝わったからです。中国では「釈迦族の賢者」という意味のインドの言葉に「釈迦牟尼」と言う漢字を当てたようです。日本語はそこから最初の2文字を取って「釈迦」「お釈迦様」と呼ぶようになったようですね。

中国では、今でも「释迦牟尼shì jiā móu ní」と言っています。

「釈迦」だけだと部族の名前でしかないので、本当は「釈迦牟尼」って言わないといけないはずなのですけど、その辺はさすがに何でも省略しちゃいたがる日本人ですね~(笑)。

孫文

言わずと知れた「中国革命の父」ですね。日本に亡命していたこともあるので、日本人にとってなんとなく馴染みの深い中国人の内の1人だと思います。

さて、日本ではふつうに「そんぶん」と呼ばれていますが、中国では実はあまり「孙文sūn wén」と呼ばれていません。ではどう呼ばれているか、というと、、、

孙中山
sūn zhōng shān

全然違いますよね。日本人は孫文が「孫中山(そんちゅうざん)」という別名を持っていることすら知らない人がほとんどだと思います。

これは、孫文が日本亡命中によく「中山家」(華族)の表札を目にしていたそうで、その字を気に入ったとかで、自分の「号」として「中山zhōng shān」と名乗っていたものらしいです。

なぜか中国ではこの「孙中山」という言い方が一般に広まっています。でもこの「中山」という名前が、実は日本人の苗字から取っているということを知っている中国人は多くないとのこと。なんだか不思議な現象ですね。

ちなみに孫文の英語での名前はSun Yat-senだそうです。中国語をやっている人なら、これが「孙文sūn wén」でも「孙中山sūn zhōng shān」でもないことはすぐ分かるでしょう。

実はこれは、彼のもう一つの名前「孙逸仙sūn yì xiān」の広東語の音を転写したローマ字なんだそうです。

それにしても、昔の人は名前をいくつも持っていたのですねぇ(笑)。

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