第123回 思い入れ

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小学生の頃、皆さんもきっと漢字ドリルとかやらされて、苦労されたことだろうと思います。

漢字を覚えるのが苦手な人、結構多かったというように思うのですけど、何でしょう。日本漢字能力検定協会があれほどまでにもうかるくらい多くの人が漢字検定を受けるし、漢字の勉強をするためのDSのソフトがよく売れるというし、漢字のクイズばっかりやっているクイズ番組もあるし、なんだかすごいですよね。なんだ、結局みんな漢字好きなんじゃないか!と思ってしまいます。

それに、中華人民共和国で使われている「簡体字」という字。略字体の漢字のことですが、これも日本ではすこぶる評判が悪いです。「漢字の国なのに、こんなふうに簡略化しちゃって、嘆かわしい」という言葉をよく聞きます。

どうも、日本人は、漢字に対してかなりの思い入れがあるようですね。

日本と同じ、周辺国の韓国や北朝鮮は、漢字はほとんど使われなくなっていますね。若い人は自分の名前を漢字でどう書くのか分からない人もいると聞きます。また、ベトナムも漢字文化圏の国だったのですが、漢字を捨ててアルファベットでベトナム語を表記しています。いずれも、そんなに漢字に思い入れがあるわけではないようです。

では、漢字の国である中国ではどうでしょう。

上でも書いたように、中華人民共和国では、簡体字というものを作って、複雑な漢字の字体を簡略化しました。また、実際に中国人が手書きで書く漢字には、もっと大胆な略字が登場します。例えば、「厂+元」という字を見たことがあります。変な字だなと思ったら、これは「原」という字だそうです。「原」と「元」は音が同じですからね。より画数が少なくなる書き方にしようとするのでしょう。

こういうのを、我々日本人が見ると「嘆かわしい!」と思ってしまうのでしょうね。

思うに、日本では漢字はあくまで「外国から来た賓客」扱いなのでしょうね。だから、勝手に字形を変えたり、元の字が分からなくなるほど簡略化したりすることに、ちょっと抵抗を感じるのでしょう。漢字の生い立ちを知れば知るほど、「この文字は本当に素晴らしい!」と感動し、大事に守っているのが、日本人の漢字に対する姿勢でしょうか。

ところが、中国人にとって漢字とは、お客様ではなく、家族のようなものなのでしょう。

だから、中国人の漢字に対する姿勢は、かなり柔軟なものに感じます。

先日、あるフランス在住の中国人ピアニストさん(50代)に対するインタビューの通訳をしたのですが、この人の名前の漢字表記を事前に調べることができませんでした。

そこで、当日に直接ご本人にお尋ねして、書いてもらったのです。すると…。

王暁明(仮名)

というのが本当の漢字表記らしいのですが、

王小明

と書いてもいいですよ、と言われました。

確かに、「暁」と「小」は同じ音です(いずれもxiăo)。でも、漢字の意味が全然違いますよね。「暁」は「明け方」のような意味で、「小」は「小さい」という意味ですから。

それなのに、どちらでもいいのだそうです!(笑)

なんだか不思議ですね。日本人だったら、やっぱり、いくら同じ音だとしても、名前の字は正しく書いて欲しいと思うのではないでしょうか。僕の名前も、おなじ「いとう」と読むからと言って「伊東」と書かれてしまったら、ちょっと違和感を覚えます。

彼ら中国人にとって、漢字は家族のようなものだと書きました。例えば、世界的に有名な研究者でも、家族にとっては普通のお父さんだったりしますよね?それと同じで、漢字は日本人にとってはすごい発明品で、なんとなく「ありがたい」と思うモノであっても、中国人にとっては日常にあふれる日用品のような存在だったりするのでしょう。

だから、簡体字のように原形をとどめないほどに簡略化しても、そんなに未練はないのでしょうね。

僕は、むしろ、漢字を妙に崇め奉る日本人の方に興味があります。同じ周辺国でも朝鮮半島やベトナムでは漢字をそんなに崇拝していないのに、日本はすごく崇拝しています。

やはり、昔から日本人は、外から来たものをありがたがる習性があるのかもしれませんね。

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