第102回 受け身

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受け身と言っても、柔道じゃありません(笑)。

言語には言語習慣というものがあります。例えば、大学受験で英語の勉強を頑張った人はきっと聞いたことがあるであろう「無生物主語」。ご存知でしょうか。

・The letter made me happy.
その手紙は私を幸せにした。

直訳するとこんな感じでしょうか。

「その手紙は私を幸せにした」という日本語、最近はあまり違和感を覚えない人も多いかもしれませんが、日本語としてはあまり自然ではなく、いかにも「英語を日本語に訳しました」という感じがしますよね。

日本語としては「その手紙を読んで、私は嬉しくなりました。」というような感じにしないといけません。

つまり、日本語は無生物のもの(この場合「letter(手紙)」)が主語になることがあまりないのです。「その手紙は私を幸せにした」と言っても、文法的には間違っていません。でも、言語習慣としてはなじまない表現なのだということです。

前置きが長くてすみません。でもまだ前置きが続きます(笑)。

ところで「受け身(受動態)」ですが、英語の言語習慣としては、受け身の表現を非常に多用します。それは、受け身の表現にすると主語を明示しなくてよくなるからと聞いたことがあります。

英語は主語を省略することができない文法構造になっていますから、「イギリスでは英語を話す」みたいな主語のない表現は、英語としてはNGなのです。ですから、無理に「They」のような主語を立てないといけなくなるわけです。

・They speak English in England.

でも、次のようにすると意味のない主語を立てなくてもいいわけです。

・English is spoken in England.(イギリスでは英語が話されている。)

さて、日本語はどうかというと、日本語の受け身ってかなり特殊で、不思議なことが起こります。日本語の受け身は「被害」というムードを色濃く纏っているようです。だから、こんな文もありえるわけですね。

・私は自転車を盗まれた。

この文は「私」が主語になっていますが、英語でこの文を言う時は「私」を主語にすることはできません。どういうかというと「私の自転車」を主語に据え、「私の自転車が盗まれた」と言うわけです。

・My bike has been stolen.
(×I have been stolen my bike.)

「私」という人物が誰かに「盗まれた」わけではないから、英語ではこの文は非常に不自然です。(I have had my bike stolen.という言い方ならOKのようですが、受動態の文とは言えないですね)

つまり、日本語の「盗まれた」というのは、事実を単に述べているだけではなく「私は自転車泥棒の被害に遭ったんだ」というニュアンスまで含んでいるようです。こういう言語習慣なのですね。

では、中国語の受け身ってどうなのでしょうか。

中国語は、英語と日本語の中間という感じでしょうか。僕はそんな感想を持っています。例えば、上の文「私は自転車を盗まれた。」は中国語に訳すとどうなるでしょうか。

・我的自行车被偷了。
wŏ de zì xíng chē bèi tōu le
私の自転車が盗まれた。(直訳)

つまり、英語と同じような考え方ですね。このように言うのが、多分普通だと思います。

でも、こんな表現もOKなのです。

・我被偷了自行车。
wŏ bèi tōu le zì xíng chē
私は自転車を盗まれた。(直訳)

つまり、中国語でも日本語と同じような受け身の文が作れるのです。でも、英語風の表現(私の自転車が盗まれた)の方が普通らしいので、日本語と英語の狭間を揺れ動いているな〜と思うのです。

日本語と英語と中国語は言語の系統としては三者三様で全く関係がないのですが、比較・対照してみると、中国語が日本語と英語の中間にあるような印象をもつことが割りと多いです。

なんだか不思議ですね。

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