第90回 打

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北京に留学していた時、街中を散歩しているとあちこちに自転車を修理してくれるおじさんがいました。

ちゃんとした商売なのですね。今でこそマイカーの時代ですが、1989年頃はまだまだ自動車を持つ人は少なく、市民のもっともポピュラーな移動手段は自転車でした。

僕も自転車を買いましたよ。自転車があると行動半径が広がりますね。でもすぐ盗まれましたけど(笑)。

自転車を買ったその日、寮まで実際に乗って帰ったのですが、どうもパンクしていたようで(不良品だったようです)空気が抜けたので、とりあえず道端の自転車修理のおじさんのところで空気を入れさせてもらいました。そこにはこんなふうに書いてありました。

打气1元
dă qì yì yuán
空気入れ1元

「え〜?1元も取るの〜〜〜?」という驚きもさることながら、「打气」という言葉にも驚きましたっけ。空気を入れることを「打气」って言うんだなぁと。

この「打」という動詞、本当に幅広く使われますね。原義は「打つ」「殴る」「叩く」といったような意味だと思うのですが、「打つ」「殴る」「叩く」とは全く違うような意味にも使われるので不思議です。ちょっと一緒に見てみましょう。

電話

初級のテキストにも出てくるのでご存知のかたも多いと思いますが、電話をかける時も「打」を使いますね。

打电话
dă diàn huà

別に電話を叩き壊すわけではないのでご安心ください(笑)。

辞書などを見ると、「打」には「発する、放つ」というような意味があるそうで、他に「打雷dă léi雷が鳴る」とか「打电报dă diàn bào電報を打つ」等の例が出ています。

しかし、「発する」というような意味ならばいつでも使えるかというとそうではないのが言語の常です。たとえば、ファックスやEメールを送る時は、普通「打」ではなくてこう言います。

发传真
fā chuán zhēn
ファックスを送る

发电子邮件
fā diàn zĭ yóu jiàn
Eメールを送る

電話をかけるのは「打」で、ファックスを送るのは「发」。一体どう違うのかと考えてみたのですが、「打电话」の方は「電話をかける」という行為そのものを表していますね。「发传真」の方は、ファックスをセットしてプッシュホンを押して、といった一連の行為を言うのではなく、ファックスの内容を送るという意味のように思います。だからEメールを送るのも「发」なんでしょうね。

では「电报(電報)」だって内容を送るわけだから「发电报」と言えるのではないかなと思って検索すると、結構ヒットしました。やはりやはり(笑)。

つまり、「打」は行為そのものを指し、「发」は何か内容を送るという感じなのでしょうね。

水、お湯を汲む

水やお湯を汲むことも「打」をよく使いますね。中国ではよくお茶を飲みますが、そのために熱湯をよく汲みに行ったりします。それをよくこう言っていました。

打水去。
dă shuĭ qù
お湯(水)を汲みにいく。

何か、モノを貰うとか、自分のものとするというか、そういうニュアンスなのでしょうか。だとすると、次の言い方も類似表現かもしれません。

打的
dă dí(dă dīという人もいるようです)
タクシーを拾う

(「的」というのがタクシーのことです。標準語ではタクシーは「出租车chu1 zu1 che1」と言いますが、広東語では「的士」と言います。それが標準語にも取り入れられているのです。)

このように、「打」は本当に色々な場合に使われるようです。他にも「从cóng(〜から)」の代わりに使われたり、dáと第2声で読まれると「1ダース」の「ダース」だったり、本当に八面六臂の大活躍です(笑)。

皆さんも色々探してみてくださいね。きっと面白いですよ。

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