第77回 部分否定

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昔々、20年以上前、高校生だった伊藤祥雄は漢文の授業が苦手で苦手で(笑)。

それがなぜ今は中国語(現代語ですが)をしているのでしょうね。人生って分からんものです。

で、苦手だったことの1つに部分否定と全否定があります。たとえば:

  1. 必不読。
  2. 不必読。

これ、上の文は全否定で、下の文は部分否定です。どう読み下すかというと、

  1. 必ず読まず。
  2. 必ずしも読まず。

つまり1は「絶対読まない!」という意味(全否定)で、2は「絶対読むとは限らない」という意味(部分否定)なわけですね。

受験生用の漢文のテキストなんかだと、

  • 副詞を前に、「不」を後ろに置いた場合→全否定
  • 「不」を前に、副詞を後ろに置いた場合→部分否定

というような「公式」にして覚えやすくしてくれるわけですが、僕はこういうのってなぜか覚えられなくて、困った覚えがあります。

要するに、中国語の修飾語は前から後ろにかかるので、1と2はそれぞれこんな構造になってるわけです。

  1. 必+(不+読)→「読まない」ということが「必ず」起こる。
  2. 不+(必+読)→「必ず読む」ということは起こらない。(読むかもしれないし読まないかもしれない)

こういう原則は、現代語にも生きています。たとえば:

  1. 很不好。hěn bù hăo
  2. 不很好。bù hěn hăo

1は「不好(良くない)」を「很」で強調しているので「とっても悪い」という意味になります。
2は「很好(とても良い)」を「不」で否定しているので「とても良いわけではない」という部分否定的な意味なのですね。

なんというか、とても単純でコンパクトな表現方法ですね。それに比べて日本語の面倒さと言ったら(苦笑)。

日本語にはかっちりと決まった部分否定の文型や全否定の文型がないようですね。たとえば1番2番の文を現代日本語に訳すと:

  1. 絶対読まない。
  2. 必ず読むわけではない。

1を「必ず読まない」と訳してもいいでしょうが、どうも「必ず」という言葉の後に否定形が来ると、なんとなく部分否定のニュアンスが入るので(「必ずしも」からの類推でしょうか)、「必ず」よりは「絶対」というような言葉に代えた方がいいように思います。

つまり、文型では表現しきれないので語彙でカバーするのが日本語の全否定・部分否定なのです。

そして、実際の会話等では、「必ず読まない」「とても良くない」というような言い方を部分否定として使う人も少なくありません。部分否定であることをハッキリさせるためには「必ず読むわけではない」もしくは「必ずは読まない」というように言うわけですが、伊藤も含めて結構頻繁に「必ず読まない」というような全否定的表現を部分否定として使っている人って多いです。たとえば:

  • Aさん「この服、すっごく高いね」
  • Bさん「すっごく高くないよ。」

この「すっごく高くない」という言い方、字面だけで見ると明らかに全否定的で、言い換えると「すごく安い」という意味のはずだと思うのですが、少なくともこの文脈では「すっごく高いというわけではない」という意味で使われていると思います。

日本語も中国語と同じで、修飾語は前から後ろにかかるので、「すっごく」は「高くない」にかかっていくわけですが、実際には「すっごく」は「高く」までしかかからなくて、「すっごく+高く」に「ない」がくっついているように思ってしまうのでしょうね。そうすると「すっごく高い」を否定している形のようになって、部分否定的なニュアンスが出てしまうのでしょう。

これは、日本語の構造の限界なのかなぁと思っています。その点中国語は、構造上で部分否定と全否定を区別できるので、誤解がなくていいですよね。

……なんて、今は偉そうに言えるのですが、高校生の頃はさっぱり分かっていませんでした(苦笑)。

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