第74回 母語の理解

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いきなり余談ですが、僕は「母国語」という言葉を使わず「母語」と言うように気をつけています。

というのは、1つの国に1つの言語しかないわけではないからです。日本はたまたま、ほとんどの日本人が日本語を「母語」としているので、「母国語」と言ってもあまり問題はないようですが、たとえばスイスという国はフランス語を母語とする人とドイツ語を母語とする人がいますよね?

スイス語という言葉がないのですから「母国語」という言い方はちょっと成立しがたいと思うのです。そう思って著書の中で「母語」という言葉を使ったら、編集者に「母国語」と書き直されてしまいました。気がつかず、そのまま出版されました。ううう、不覚(笑)。

それはさておき

最近、ある中国語学習関連雑誌のQ&Aコーナーで、「〜けれども」とか「〜が」というのを「但是dàn shì(しかし)」で訳せない場合があるようですが何故ですか?という質問が出ていました。

一体どんな場合に「但是」で訳せないのだろうかと、すご〜く興味を引かれて読み進んでいったのですが、ちょっとガッカリ(笑)。中国語の問題ではなく、日本語の解釈の問題だったからです。でも、確かに日本人が犯してしまいそうな間違いなので、ちょっと一緒に勉強してみましょう。

まずは普通の文の場合を見てみましょう。

彼は中国語を話すのがゆっくりだが、発音はよい。

他汉语说得很慢,但是发音很好。
tā hàn yŭ shuō de hěn màn, dàn shì fā yīn hěn hăo

「ゆっくりだが」の「が」は逆接の接続助詞です。「が」の前部と後部で意味が逆転していることを示しているのですね。

では、この日本語はどうでしょうか。

「私は学生ですが、あなたは?」

この「が」は、逆接でしょうか。

「私は学生です」ということと「あなたは(何ですか)?」ということは、逆転関係ではありませんね。この「が」は、話題を提示しているような感じです。

ところが「但是」は逆接を表す用法しかありません。このような「話題提示」の「が」を「但是」で訳すことは出来ないわけです。こんな場合は、何も接続詞は要りません。

(X)我是学生,但是你呢?
→(O)我是学生,你呢?
wŏ shì xué sheng, nĭ ne

日本語のこの種の「が」「けど」等はそんなに特殊ではありません。皆さんも簡単に例文が思いつくのではないでしょうか。

「ここだけの話だが、Aさんは離婚したそうだ。」
「この服、きれいだけど、誰からもらったの?」
…などなど。

この文と比べてみてください。

「この服、きれいだけど、高いね。」

ある言葉を別の言語に訳したい時、それを字面だけで訳してはダメなのですね。本当は何を言っているのか、一度頭で理解してから訳出すると上手くいくのでしょうけど、我々はついつい表面的にやってしまいがち。お互い気をつけたいですね。

僕が時々戸惑うのは、こんな日本語です。

「医学の進歩ってすごいですよね!」
「いやいやいや、ほんとにすごいですよね」

この「いやいやいや」の部分ですが、最後まで聞かないと、この「いやいやいや」が

不不不
bù bù bù
違う違う違う

なのか

对对对
duì duì duì
そうそうそう

なのか分からないではありませんか。まぁ、声の感じから、もしくは文脈から、なんとなく分かる時も多いですけどね。

結局、正しく中国語に訳すためには、正しく日本語を理解しなければならないわけです。日本人の日本語知らず、と言われないように、皆さんも日本語(母語)を日々磨いてくださいね。僕も頑張ります。

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