第73回 カタカナ表記

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僕が中国に留学していた時、非常にお世話になった中国人男性がいます。彼は日本人留学生と交際していて、よく留学生宿舎にも遊びに来ていたので、いつしか僕とも仲良くなったのでした。

彼の家にもよく遊びに行き、ご家族にも非常によくしてもらいました。楽しかったな〜。

ところで、彼のご両親は、伝統芸能の「皮影戏pí yĭng xì」(影絵)をやる人たちでした。趣味とかではなく、本物のプロです。海外公演の経験もおありで外国人に慣れているということもあり、我々留学生にはとてもよくしてくれました。

その「皮影戏」、最近時々テレビで紹介されるのを見ます。たいてい紹介されるのは残念ながら北京の劇団ではないので、僕の知り合いがテレビに出てくることはないのですが、なんだか嬉しいものですね。ふるさとに出会ったような感覚です。

今朝もNHKのニュース番組の特集で紹介されていました。大連の劇団だったので、やはり僕の知り合いは出てこないのですが、大変懐かしく、じっと見入ってしまいました。

この「皮影戏」のこと、NHKのアナウンサーが「中国語ではピーエンシーと読むのだそうですが…」と発音し、画面にも字幕が出て「ピーエンシー」と書いてありました。

「影yĭng」という字が「エン」か〜。むむむ。

ご存知の通り、「影」という字はご存知のとおりyĭngと読みます。「-i」という母音に「-ng」がつくと、口の中が広くなりますから、確かに単純に「イン」と書くとちょっと違うかもしれませんよね。「エン」と書いた方が、もしかしたら近いかも。

「-n」と「-ng」の違いは、舌先を前歯の裏辺りにくっつけるかくっつけないかの違いです。でもその舌先の動きに影響されて、その前の母音の響きに大きな違いが出てきます。たとえば:

「tan」(例:谈tán)という音と
「tang」(例:堂táng)という音は、
カタカナで表記するならどちらも「タン」と書かざるを得ませんが、同じ「a」でもかなり趣きの違う音になっています。

「tan」の方は、口の中がとても狭くなりますので、「エ」に近いくらいの音になります。そうですね。丁度英語の apple の「a」の音に近いような音ではないでしょうか。

それに比べて「tang」の方は、口の中がとても広くなります(唇も閉じません)ので、「オ」に近いくらいの音になりますね。アクビをする時の「あ〜〜〜」という雄たけび(?)くらいの音です(音量はそこまで大きくないですが…笑)。

このように、たいていは母音の響きが違うのでなんとか聞き分けられますが、「-in」と「-ing」の違いは僕達日本人には非常に聞き分けにくいと思います。

それを、NHKさんでは「イン」ではなく「エン」と書くことで解決しようとしたのでしょうね。なるほど、とても示唆的で、朝から一人で納得するやら反論するやら、楽しい時間を過ごしました(←かなり変人ですね…苦笑)。

まぁ、元々中国語の発音を日本語のカタカナで表記すること自体、無理な話なので、そう言う意味ではどう書いても正解にはならないわけですから、僕はあまりこだわりません。

僕は自分の著書でも一応カタカナ発音表記を書いていますが、出版社から書いて欲しいといわれるので書いているだけです。だから、カタカナ表記はできれば外したいくらいの気持ちです。

以前、ある出版社から、中国語会話カレンダーを作って欲しいといわれて作ったことがあります。その時はピンインを入れずにカタカナ表記だけにして欲しいと言われ、渋々従ったのですが、あろうことか(?)注文主さんの会社が「中国人にカタカナ発音表記を見直してもらったので、このように変えたいがいいですか?」と言ってきたのです。

まぁ、カタカナ表記にこだわりなど全くない伊藤祥雄は、別にどうでもいいや、と思いつつ拝見したのですが、、、えらいことになっていました。たとえば:

  • 是…スー
  • 生…セン

つまり、shiのような発音をsiのように、-engを「エン」というように書いているのです。これは、明らかに南方方言の影響だと思い、確かめてみると、訂正した中国人は南方出身の人でした。

たとえばeの母音を「オー」と書くか「ウー」と書くか、という程度ならどっちでもいいのです(どうせどう書いても正解にはなりません)が、方言の影響を受けた発音を表記するのはどうしても僕には納得できないものだったのです。(方言のことを馬鹿にしているわけではありませんので、誤解のないようにお願いします。)

その中国人さんと直接話し合いましたが、平行線。仕方なく、僕の名前を出さないということで、あちらの好きなようにしてもらいました。

でも、確かに、「shi」のような音は「シー」と読んでも絶対に通じませんね。むしろ「スー」と訛った音で言った方が通じるかもしれません。

全く、中国語の発音は日本人には悩ましいですね。実際に音声をよく聞いて真似するしか正しい発音を身につける方法はないようです。

カタカナ発音でほとんど問題がないらしいスペイン語等が羨ましい(←よく聞く話ですが、本当ですかね?)。

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