第40回 一石二鳥 一挙両得

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中国語←→日本語の通訳や翻訳をしていると、中国語と日本語の違いが色々と分かって面白いです。

通訳をしていて思うのは、日本語ってほんとにはっきりものを言わない言語なのだなぁということです。

一度、取材に来た中国人新聞記者が大幅に遅刻してきたことがありました。ある音楽家に取材したいということだったのですが、時間が遅れたので音楽家のマネージャーからこんなふうに言われました。

「取材の時間は予定の時間までということにしたいので、その辺りをそれとなく記者さんに分からせていただけませんか?」

「それとなく」「分からせる」なんてことは、無理です(笑)。これは日本人の専売特許でしょうねぇ。

日本人相手だったら「すみません。このあと音楽家さんは予定がつまってますので…」とでも言えば「ああ、時間がないから取材は早めに終わらなければならないな」と分かってくれるでしょうが、中国語で同じようなことを言っても相手の中国人には「???だから何?」と思うのではないでしょうか。

中国人相手なら、ズバッと言ってしまっても全然構わないと思います。はっきり言うと「はい、了解しました」と言ってくれるでしょう。

次に、翻訳をしていて思うのは、日本語って名詞が好きだな、ということです。

例えば何かしなければならないことを箇条書きにする場合、日本語は名詞的な言い方で箇条書きにすることが多いように思います。例えば:

  1. 掃除
  2. 洗濯
  3. 買い物

中国語で書くなら、おそらく動詞的表現でしょう。

  1. 打扫屋子 dă săo wū zi
  2. 洗衣服 xĭ yī fu
  3. 买东西 măi dōng xi

ですから、中国語から日本語に訳すときは、できるだけ名詞的に訳すよう心がけています。
例えば、箇条書きの項目として次のように書いてある場合:

参加股东大会
cān jiā gŭ dōng dà huì
(直訳:株主総会に参加する)

これを日本語に訳すなら、直訳のように訳しても全く問題はないと思うのですが、より日本語らしくするのであれば「株主総会への参加」とした方がいいでしょうね。もちろん、箇条書きの場合ですが。

それで思い出したのが「一石二鳥」です。

先日、クイズ番組を見ていると、「次の四字熟語の中で、もともと英語のことわざだったものを日本語に訳したものはどれでしょう」とかいうのがありました。他の選択肢は忘れてしまったのですが、答えは「一石二鳥」でした。

「一石二鳥」は漢字ばかりで非常にコンパクトな表現ですから、一見、いやどう見ても、中国語のように見えますよね?僕も今までこれが何語かなんて考えることもなかったのですが、確かに、よく見てみるとこれは中国語っぽくはないように思えます。

同じような意味を表す四字熟語があります。何でしょうか。分かりますか?

一挙両得(いっきょりょうとく)
一举两得 yì jŭ liăng dé

「1つ行動を起こすと2つの利益を得る」というような意味で、「一石二鳥」とほぼ同じ意味を表すと思います。「一石二鳥」と「一挙両得」、構造も似ているように見えますが、大きな違いがあります。それは、名詞的か動詞的か、ということです。つまり、「挙」も「得」も動作を表す言葉ですよね?それに比べて「石」も「鳥」もガチガチの名詞です。

「一石二鳥」は「1つの石、2羽の鳥」と言っているだけで、結論部分がありませんね。
「1つの石(を使って)2羽の鳥(をしとめる)」という意味だと思いますが、( )でくくった部分は聞き手の想像に任されるわけです。

それに比べて「一挙両得」は「1つ行動して2つを得る」というような意味で、これだけできちんと結論まで言ってくれているのです。

冒頭でも書いたように、日本語ははっきりものを言いません。それは結論部分を濁らせて相手の想像に任せるわけです。「一石二鳥」は、そういう意味では非常に「日本的」だと思いませんか?

ただ、「一石二鳥」は中国語にも入っています。英語の「To kill two birds with one stone」を訳した言葉であることは確かのようですが、おそらく日本語から入ったのではないかと思われます。ちなみに韓国語でも全く同じように言う四字熟語があります。こんなにも広く使われるということは非常に完成度の高い熟語なのでしょうね。訳した人ってすごいですねぇ。

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