第31回 見えないけど聞こえる

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伊藤は、ちょっと自慢しちゃいますと、中国語の発音はよく褒められます(笑)。

僕が最初に中国語を習った先生は、ものすごく発音にうるさい先生でした。生徒に朗読させていて、その生徒が変な発音をすると、急に目を見開いて

「何だと?今、何と言った!もう一度言ってみろ!」

と、ものすごい剣幕で指摘なさるのです。自分が言われているのでなくても恐ろしくて、みんな固まっていました。僕の友人(今はすでに大学教員)は、今でもその先生の名前を見るだけで冷や汗が出ると言っています(笑)。

しかし、最初にそういう先生に習ったお陰で、僕は自分でも発音を結構研究するようになりました。これはよかったなと思っています。中国人と知り合うたびに褒められるので(笑)。コンビニや居酒屋の中国人店員の前で中国人のふりをしてからかうのが趣味です(嘘です)。

冗談はさておき、先日北京に行った時、ホテルの従業員と世間話をしていたのですが、北京の次はどこに行くかと聞かれ、

敦煌

dūn huáng

と言ったのですが、これがなぜか、なかなか通じないのです。何度も言ってようやく通じたのですが、とてもショックでした。発音が悪くて通じなかったなんて、十数年ぶりですから。

さて、何がいけなかったのかというと、「敦」の字の発音がいけなかったのです。

この字の発音は、ピンインで書くと「dūn」です。でも、書いてある通り読むとダメなのです。実はこれは二重母音で、本当は「duen」です。

-uenという発音は、前に子音がつかなければ、uをwに書き換えてwenと書き、前に子音がつく場合は-unと書くのでしたね。皆さんもピンインの綴り方を習った時に聞いた覚えがあるでしょう。

ですから、「敦煌」の「敦dūn」の字と、「温度」の「温wēn」の字は、同じ母音なのです。

ところが「温wēn」を「ウン」と読む日本人はまずいないのに「敦dūn」は「トゥン」のような発音をしてしまう日本人がとても多いのです。自分で反省してみますと、「敦煌」と言うときは、後ろの字がhで始まるため「敦」も-nではなく-ngのような発音をしてしまっていました。しかも、隠れてしまったeの音を忘れてしまっています。そうすると、あたかもdongのような発音になっていたのですね。

dōng huáng

これでは「敦煌」と思われなくて当然ですね。我ながら情けないことです。

なぜeを省略して書くのでしょうねぇ。ちゃんと書いてくれれば忘れないのに(笑)。

ただこれにもそれなりの理屈はあるようです。というのは、実際に中国人の発音を聞くと、そんなに大きくeの音を発音していないのです。口の形をuからnへ変える時に、途中で偶然eの音が介在したような感じです。

母音uは唇を前に突き出していますよね。しかしnの時、唇はどちらかというと横に引っ張った状態に近いです。形がかなり違いますから、uからnに移る時に何か違う音が入ってしまうのです。それが、ちょっと聞くと「エ」みたいな音に聞こえるのですね。

つまり、中国人にとっては、-unと書いてあれば、間に「エ」みたいな音があるとか思わなくても、勝手に「エ」みたいな音が入ってしまうのです。だから-uenとは書かないのでしょう。

ではなぜ子音がないときはeを書くのか。つまり、wenと書くのか。

それは、もしeを書かなければ、wnとなってしまいます。これでは、あたかも母音のない音節のように見えてしまいます。これはちょっとまずい。ということでwenと書くことにしたのだと思います。

同じようなものが他にもあります。

-iouという三重母音

これは、前に子音があれば-iuと書き、前に子音がなければyouと書く三重母音です。

口の形をiからuに変えるとき、間に「オ」のような音が介在してしまうのですね。母音iの舌の位置は高いですがuは日本語の「オ」と同じくらい低い位置にあります。だからiからuに変える時に舌の移動のせいで「オ」のような音が介在してしまうのです。中国人にとっては当たり前のことですが、日本人の「ウ」は舌の位置が高いので「イウ」と言うときに「オ」のような音を介在させなくても簡単に言えるわけです。でもそれではダメなの
ですね。中国語らしくなくなってしまうのです。

これも子音がなければ間にoを入れてyouと書くのですが、もし書かなければyuとなってしまいます。もしyuと書くと、別の音になってしまいますね(uウムラウトの音)。だからoを間に書くのでしょう。

-ueiという三重母音

これは、前に子音があれば-uiと書き、前に子音がなければweiと書く三重母音です。

上述の-iuと反対で、uからiに変える時は舌の位置と唇の形の違いから、「エ」のような音が介在してしまうのですね。

この場合も子音がなければ、間にeを入れてweiと書くわけですが、もし書かなければwiとなります。こう書くと複合母音のように見えませんね。というわけでweiと書くのでしょう。

以上三つの複合母音は、中国人であれば意識しなくても勝手に間に音が介在するので、介在する音をわざわざ書かなくても大丈夫なのですが、我々日本人は、やっぱりちゃんと意識しておかなければ忘れてしまいがちです。お互い注意しましょうね!

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