第21回 結局何倍?

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生産量が何倍になったとか、GDPが何倍になったとか、倍数表現は新聞やニュースではよく見聞きします。日本語だと「〜倍」という表現くらいしかなく、あまり難しくないと思うのですが、中国語の場合結構ややこしいことがあったりします。ちょっと一緒に見て確認してみましょうか。

翻 fān

「翻」は「倍増する」という意味があります。量詞は「番」を使って、例えばこんなふうに言います。

藏族人口总数翻了一番。
zàng zú rén kŏu zŏng shù fān le yì fān
チベット族の人口総数は倍増した。

つまり、「倍増」が「1回」起こった、ということです。ということは、「翻两番fān liăng fān」といえば何倍になったかというと、「倍増」が「2回」起こるわけですから、4倍になるわけですね。

では、こうなると、何倍になるでしょうか。

翻三番fān sān fān

「倍増」が「3回」起こるわけですが、2×3で6倍かというと、そうではありません。1回倍増すると2倍、その「2倍」が更に倍増すると元の4倍、その「4倍」が更に倍増すると元の8倍になりますよね?つまり、「翻三番」とは、8倍の意味です。

本当に分かりにくいですよねぇ。実際に言う数字は「3」なのに、事実上は「8倍」なのですから。

でも、恐れることはありません。これは、2の累乗だと思えば分かりやすくなります。

つまり、「翻三番」は(2×2×2)倍、つまり「2の3乗」倍なのです。

  • 翻一番→2の1乗 つまり2倍
  • 翻两番→2の2乗 つまり4倍
  • 翻三番→2の3乗 つまり8倍
  • 翻四番→2の4乗 つまり16倍
  • 翻五番→2の5乗 つまり32倍

ある通訳者の先生から聞いた話ですが、ある発言者が「翻2.5番」というようなことを言ったそうです。日本語には「翻〜番」に類する言い方がないので、訳すなら「〜倍」という言い方に直さなければならないですよね。そうなると、「翻2.5番」は何倍といえばいいかとっさには分かりません。そこで先生は発言者に質問したそうです。「結局何倍なのですか?」と。すると、発言者にも分からなかったそうです(笑)。

2の2.5乗って、どんな数字になるのですか?数学は好きでしたが、すっかり忘れてしまいました。2の2乗は4で、3乗は8ですよね。2.5乗はその間ですから、6くらいですかね?(笑)

中国語の「倍」は量詞扱いのようで、それがために我々から見るとちょっと不思議なことが起こります。たとえば:

  1. 产量增长了三倍。
    chăn liàng zēng zhăng le sān bèi
    生産量が3倍分増えた。(つまり、4倍になった)
  2. 产量增长到三倍。
    chăn liàng zēng zhăng dào sān bèi
    生産量が3倍に増えた。(つまり、3倍になった)

1と2、見かけはソックリですが、意味はかなり違います。これは本当に日本人には分かりにくいし、不思議な表現です。

中国語の「倍」は、元の量と同じ分を表す単位(つまり量詞の一種)だと考えると分かりやすいかもしれません。まず、別の量詞「个」に置き換えて考えてみましょうか。

昨天又增加了一个。

zuó tiān yòu zēng jiā le yí ge
昨日また1つ増えた。

こういう場合「元々ある個数+1個」という数字になります。元が1つだったら、更に1つ増えて、その結果2つになったことになります。これはお分かりいただけますね?

量詞が「倍」になっても同じことです。

昨天又增加了一倍。

zuó tiān yòu zēng jiā le yí bèi
昨日また1倍分増えた(つまり、2倍になった)。

元の個数が例えば10個であれば、10個の1倍は10×1=10、つまり10個です。つまり、1倍分増えたということは、10個増えたことになり、全体としては20個になったということです。10個から増えて20個になったので、結果としては2倍ですね。

こう考えると、変だなと思っていた中国語の倍数表現もかなり論理的だということが分かってきますね。

では、2の方の表現はどうなっているかというと、これも「个」で考えてみましょう。

从三个增加到五个。

cóng sān ge zēng jiā dào wŭ ge
3個から5個に増えた。

この場合は「到」という結果補語が効いています。「增加」した結果「五个(5個)」になった、という意味なのです。元の個数は関係なく、結果が何個かということを示しているのです。ですから、2の例文も「生産量が増加した結果3倍になった(元の量の3倍分になった)」という意味になるのです。

ややこしいですが、お分かりいただけたでしょうか。「翻」にせよ、「倍」にせよ、意外と中国語も論理的なのですねぇ。「意外と」なんて言ったら怒られるかもしれませんが(笑)。

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