第19回 どっちでもいい?

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以前、ちょっと必要だったのでドイツ語やフランス語を勉強したことがあります。でも全然モノにならなかったのですがね(笑)。

フランス語を習っていたとき、先生がこんなことをおっしゃっていました。「私、最近中国語を勉強しているんですよ。面白いですよ!いいですね、中国語は。文法がほとんどなくて。」

「文法がない?」聞いていた伊藤祥雄青年(当時)は、大変ショックでした。こう見えても、一応文法研究で卒論を書いた人間です。文法がないなんていわれたら、僕は一体何をやっていたのだろう、ということになってしまいますからね。

しかし、まぁ、先生のおっしゃっていたことも分からないではありません。中国語には「こう言ってもいいし、こう言っても同じような意味になる」というようなことが結構あります。西洋語に慣れていると、「中国語って何でもアリ?」と思ってしまうのも無理からぬことでしょう。

例えば、次の二文をご覧下さい。

  1. 这时一辆出租车开过来,〜
    zhè shí yí liàng chū zū chē kāi guo lai
    この時タクシーが一台やってきて、〜
  2. 这时开过来一辆警车,〜
    zhè shí kāi guo lai yí liàng jĭng chē
    この時パトカーが一台やってきて、〜

日本語だけ見ると、「タクシー」と「パトカー」が違うだけで後は同じです。ところが中国語を見ると、語順が違うのですが分かりますか?単語ごとに切って、比べてみましょう。

  1. 这时 一辆出租车 开过来
  2. 这时 开过来 一辆警车

これでお分かりのように、前者は動作主(動作を起こす人・モノ、ここではタクシーとパトカー)が動詞の前に、後者では動詞の後に入っているのです。

中国語は語順が命だということを聞いたことがあると思いますが、実際にはこんなにイイカゲンじゃないか!と思われている方もいるでしょうね。しかし実は、AとBには少し違いがあるのです。今日はそれを見ていきましょう。

タイプ1の文は、日本人にとってそれほど違和感はないでしょう。しかしタイプ2は違和感を感じるかもしれません。タイプ2の文は「存現文」と呼ばれています。「存在・出現」を表す文ということで、まだ話題になっていないことが「存在・出現」することを言いたいときに使う語順です。例えば:

椅子上有一本书。

yĭ zi shang yŏu yì běn shū
椅子の上に本が一冊ある。

この文は、それまでにその本については全く言及されていないときに用います。もし、ある本について色々話した後「その本は椅子の上にある」と言いたいのであれば、「那本书在椅子上。」と言い、「その本」という言葉は動詞の前に置かれます。

前边来了一辆汽车

qián biān lái le yí liàng qì chē
前方から自動車が一台やってきた。

この文は、やってきた自動車についてはその時まで未知の存在でしたが、その時その場に現れるわけです。

こういった「存現文」の語順は、「(場所+)動詞+(出現・存在する)モノ」というようになっています。逆に言うと、このような語順をとれば、何かが急に現れた、あるいは存在に気付いたようなニュアンスを出すことが出来るわけです。例えば:

中国出了个毛泽东。

zhōng guó chū le ge máo zé dōng
中国に毛沢東が現れた。

この文は、有名な歌『东方红』という歌の中の一節です。「毛泽东在中国出现了」とやってしまいそうになりますが、存現文の語順をとることで、まず中国の地図のようなものにスポットが当たり、その後中国のどこかで毛沢東の姿がポコっと現れてくるような、そんな情景が見えてきますね。

さてここで1、2に戻ってみましょう。

  1. 这时一辆出租车开过来,〜
    この文では、まず「出租車(タクシー)」に目が行き、それが走ってくる様子が見えてきますね。
  2. 这时开过来一辆警车,〜
    この文では、まず何かが走ってくる様子が先に見えてきて、その後でそれが「警車(パトカー)」だったことが分かる、という感じです。

どっちでもいいわけではないのです。話者が何を強調したいかによって使い分けているということなのでしょう。最初に言われたことにスポットが当たって、その後に言われたことにスポットが移動していく感じが分かりましたか?

この「存現文」、実は「消失」を表すこともできます。それについては、またいつかお話することにしましょう。

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