第4回 「一」について

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10月1日は中国の国慶節(国庆节guó qìng jié)です。1949年10月1日に、中華人民共和国が成立したので、中国では毎年10月1日を国慶節としてお祝いしています。最近ではこの日から数日間祝日となっており、「十一黄金周shí yī huáng jīn zhōu」と呼ばれています。僕が留学していたときは、2日ほど休みになるだけだったのですが、今はいいですねぇ(笑)。

さて、この「十一」ですが、当然ながら数字の「11」ではありません。「10月1日」のことを略して「十一」と言っているのですよね。このメルマガの第3号で書いたとおりです。

この「一」ですが、ご存知のとおり読み方が2つあります。1つは「yī」、もう1つは「yāo」です。

メルマガ第3号で出した例でも両方の音がありました。例えば、メーデー「五一」は「wŭ yī」でしたが、アメリカ同時多発テロ「911恐怖事件」の「911」は「jiŭ yāo yāo」と読むのが一般的なようです。

数字については初級の比較的早い時期に勉強しますが、「一」の読み方が2種類あるという話は、大抵もっと先の方で出てきます。僕の教えている生徒さんは、「yāo」という読み方が出て来たとき非常に困惑していました。どうせなら、最初から両方の読み方を教えておいてくれたらいいのに!ということなのですが、皆さんはどうでしょうか?

どのようなときに「yī」を用い、どのようなときに「yāo」を用いるか、ここでもう一度整理しておきましょう。

基本的には、数字を粒読みするときは「yāo」を用います。ですから、電話番号、ホテル等の部屋番号等では「yāo」ですね。但し、年号を言う場合は、粒読みをするにもかかわらず、「yī」を用います。

「一」という漢字の本来の読み方は「yī」です。何のために「yāo」を用いるかというと、聞き間違いを防ぐためです。
「一」は母音が「-i」で声調は第1声ですね。そっくりの数字がもう1つあります。「七qī」です。「一」と同様、母音は「-i」、声調は第1声です。

日本語でも「いち」と「しち」は発音が大変似ていますから、時々混乱したりするのではないでしょうか。僕は7月生まれなのですが、自分の誕生日を人に伝えるときに「しちがつ」というと「いちがつ」に聞き間違えられてしまうことがありました。ですから、ちょっと変に聞こえるかもしれませんが「なながつ」と言うようにしています。

「一」を「yāo」と読むのは、それと全く同じ理由からです。数字は大切です。普通の単語だと多少聞き取れなくても文脈でなんとか分かったりしますが、粒読みする電話番号などは文脈では分かりません。だから、少しでも聞き間違いを防ぐために「yāo」という言い方をするのです。

ではどうして年号は、粒読みするにもかかわらず「yī」を使うのでしょうか。
これは僕の想像ですが、おそらく年号は文脈でおおよその見当がつくからではないでしょうか。

例えば1987年のことを話しているのに、7987年とは誰も思わないでしょう。2011年の話をしているときに2017年と思う人はいるかもしれませんが、比較的間違えにくいと思います。

僕なんかは、どうせなら全部「yāo」にしてしまえばいいのに、などと思ってしまうのですが、それをしないところを見ると、中国人の頭の中では、やはり「yī」という音が正式だ、という考え方があるのだと思います。事実、台湾では「yāo」は使わないようです。ですから、あくまで「yāo」は、分かりにくいときに便宜上用いるものである、と言えそうです。

では、メルマガ第3号で出した例をもう一度振り返ってみましょう。

  • 918(満州事変)
  • 128(上海事変)
  • 911(アメリカ同時多発テロ)
  • 五一(メーデー)
  • 十一(国慶節)
  • 十一五(第十一期五カ年計画)

「一」がからむものだけを抜き出してみましたが、この中で「yāo」と発音するのは「911」のみです。

「一」が2つ続くと、「イー イー」となり、ちょっと早く話すと「イーーー」と長く伸ばしているだけのように聞こえてしまうかもしれません。だから、「ヤオ ヤオ」ということにしているのでしょう。

どうやら、「yāo」は使わずにすむものなら使わずにおこう、という考え方のようです。

意外と合理的なのですね。感心しました。言語というものは、こうやって、使われていく内に無駄なものは消えて必要なものだけが残るのでしょうね。

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